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従業員ライフサイクル :企業が理解し、改善すべき7つのステージ

この記事は 9分 で読めます
世界のトップ企業では、従業員エクスペリエンスを強化するため、従業員ライフサイクルプログラムを活用しています。この記事では、従業員ライフサイクルとは何か、なぜ7つのステージが存在するのか、そして重要なタッチポイントごとにフィードバックを測定する方法にはどのようなものがあるかについてご紹介します。

従業員ライフサイクルとは?

カスタマージャーニー」という言葉は定着してきた感がありますが、従業員にも同じ「ジャーニー」の観点を当てはめることができます。

すべての従業員は、企業・組織中でマイルストーンを通過します。これが「従業員ジャーニー」です。従業員ジャーニーは、従業員が対象となる会社の存在について知った日から始まり、退職する日まで継続します。これは、「従業員ライフサイクル」モデルとして知られ、世界中の人事・人材開発部門に採用され、実績を上げています。

前述のとおり、従業員ライフサイクルモデル(ELM)は、カスタマージャーニー マップから着想を得ています。もし、企業が顧客のためにインサイト、インパクト、問題、機会、イノベーションを測定し、評価することができるとしたら、従業員のためにもこのようなマッピングを利用することができるのではないでしょうか。従業員エクスペリエンスは、カスタマー エクスペリエンス同様に同価値があります。ELM は、従業員が組織とどのように関わっているかを、従業員のジャーニーの段階ごとに可視化・追跡するために利用されます。

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従業員ライフサイクル戦略の設計はなぜ必要か

各従業員のライフサイクルを、カスタマージャーニーと同じように綿密・正確に分析し、明らかになったデータに基づいて行動することができれば、以下のような大きな効果を上げることが期待できます。

会社の評判を高め、優秀な人材を採用するためには、莫大なコストと手間がかかります。従業員を定着させる方法が見つかり、ブランドの評判が自然に成長すれば、そうした分野で節約した資源をビジネスの他の部分に向けることができるようになります。

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従業員ライフサイクルの 7 ステージ

従来、従業員ライフサイクルには以下の5つの段階があると考えられていました。

しかし、クアルトリクスは、ライフサイクルの最初の段階での「企業ブランド認知」と、最後の段階での「口コミ」という2段階を追加する必要があると考えています。

1. 企業ブランド認知

有名な企業の前を通りかかったり、素晴らしい製品を使ったりして、「この会社で働ければいいのに」と考えたことはないでしょうか。クアルトリクスは、従業員ライフサイクルは、あるブランドの存在を認知し、そのブランドとの関わりの中でポジティブな体験をし、そこでキャリアを考えるところから始まるべきだと考えています。

つまり、良いイメージを持ち、ミッション、ビジョン、バリューに忠実で、理想的にはブランド エクイティの高みに達するような優れたブランドを構築することが、優秀な候補者をビジネスに引き寄せることになるのです。

企業ブランド認知のためのKPIと測定基準:企業がベストを尽くしていることを確認するために、ブランド トラッキングの指標をすべて確認する必要があります。

2. 採用

このステップは、従業員を新規採用するまでの全工程をカバーしています。求人広告の出稿から始まり、組織の活動内容やミッション、ブランドについて語る Web ページも必要となるでしょう。加えて、優秀な人材を獲得するためには、優れた雇用価値提案(EVP)が必要です。EVPとは、現在の従業員や潜在的な求職者に提供する、望ましい雇用主となるためのパッケージのことです。優れたEVPには、次のような概要があります。

  • 成長機会:組織で社員がどのように成長し、キャリアを開発できるか
  • :リーダー、マネージャー、同僚、職場の雰囲気など
  • 組織:「優れた企業」としての企業の名声と企業 カルチャー
  • 仕事:仕事にどれだけ意味があるか、やりがいがあるか、充実しているか
  • 報酬:給与、ボーナスやストックオプション、特典など

採用のための KPI と測定基準ソーシャルメディアで発信 されている内容を理解し、求人サイト をチェックし、フィードバックに基づいて行動することは、採用プロセスがどのように機能しているかを理解するために不可欠です。求人広告や応募・面接プロセスに関する採用前アンケートを利用して、候補者に フィードバックを求めましょう。また、採用までの時間、採用単価、内定承諾率、採用の質、採用の多様性、候補者エクスペリエンスなどを数値化することも推奨されます。

3. オンボーディング

 

この段階は、新入社員の入社初日と、ツール、システム、プロセス、役割に期待されることを理解し、生産性をフルに発揮するまでの時間(「ランプタイム」)を対象としています。この時間をできるだけ短くし、トレーニングを効率的かつ効果的に行うことが重要です。新入社員が自分なりのニッチを築き、新しい人間関係を構築するためには、必要に応じて最長で1年間、トレーニングとサポートが必要であるといわれています。

オンボーディングのKPIと指標オンボーディングとトレーニングに関する従業員向けサーベイを実施することで、新入社員がプロセスを簡単に感じた部分と難しく感じた部分を特定します。立ち上げ期間、新入社員の エンゲージメントトレーニングの効果、新入社員の離職率 などを測定します。

4. 育成

会社が継続的な専門的能力の育成を奨励すれば、チームはよりスマートで強力になります。社員一人ひとりの能力開発のスピードはさまざまであり、その内容も多種多様です。社外での学習を奨励し、社員が自分の専門的な行動計画に基づいて成長できるような環境を醸成することは重要です。また、育成には、従業員の生産性、チーム内での関わり方、研修や昇進の仕方、仕事のやりがいなども含まれます。

育成のためのKPIと測定基準:売上高、教育コスト、生産性、360度フィードバック、常時従業員からのフィードバック、昇進率(十分な数の従業員が昇進しているか)、教育フィードバックなどが含まれます。

5. 保持

この段階では、従業員は完全に成長し、会社に溶け込んでいます。このステージ以降の目標は、従業員のパフォーマンスを維持し、成長させ、ビジネスの成功に貢献させることです。優秀な人材を確保する ための投資としては、新しい人材を採用するよりも、現在の人材を維持する方がはるかにコストがかからないからです。この段階になると、トレーニングの弱点が明らかになり、優れた業績を上げている従業員や、昇進に値する従業員を見分けることができるようになります。

保持のためのKPIと指標:人材を確保するためには、ポジティブな企業文化が絶対に必要です。定期的に エンゲージメント調査 を実施し、従業員の意見を収集することが重要であり、調査結果に基づいて行動することはさらに重要です。ただし、サーベイを必要以上に実施し、「サーベイ疲れ」を引き起こさないようにするのも重要です。

また、離職率にも注意し、なぜ人が辞めてしまうのか、それに対して何ができるのかを考えることも推奨されます。

6. 退出

定年、転職、教育、個人的な理由など、従業員はさまざまな理由で退職していきますが、これは仕方のないことでもあります。退職者面接は、従業員ライフサイクルの中で非常に重要な位置を占める一方で、失敗しがちな段階でもあります。しかし、おそらく最も率直なフィードバックを得ることができる段階でもあることを考えると、上手に機会を利用したいものです。

退出時のKPIと測定基準:このステージでは、従業員が組織を去る理由を理解し、退社率を下げるために保持のステージでの改善につなげることができるようにします。

退出のステージまで、真摯に従業員の声に耳を傾ける姿勢を見せることは重要です。こで得られた知見は、ライフサイクルのすべてのステージに波及し、改善に向けた行動に役立つ高いポテンシャルを秘めています。フィードバックから学ぶプロセスを確立することで、退職者が出た場合でもチームの士気を維持する環境の醸成に役立ちます。

7. 口コミ

理想論としては、ライフサイクル全体を通して 従業員エクスペリエンス が良好で、退職するすべての従業員が積極的にブランドの宣伝者であり続けることが望ましいですが、なかなかそうはいきません。しかし、ポジティブな退職体験をした従業員は、不満や中立の従業員に比べ、その組織を他人に推薦する確率が3倍近く高くなります。

一方、不満を持って退職する従業員は、以下のような行動を取ることが多くあります。

  • 企業ブランドを傷つける
  • 優秀な人材を確保する能力に影響を与える
  • チームの士気をそぐ
  • 顧客にマイナスの影響を与える

口コミのための KPI と指標:退職した従業員の声に耳を傾け、在職期間中の貢献に感謝し、上げた功績を誇りに思ってもらえる様にしましょう。学校と同じように、同窓会制度を設け、元従業員同士のネットワークを構築するのも手です。個人的な推薦は、優秀な人材を採用し、コラボレーションを促進するための効果的で、コストパフォーマンスに優れた方法です。

ライフサイクルフィードバックによる人事KPIの最適化

ライフサイクルの各段階における KPI は、リーダーシップに価値を示し、人事施策と組織の中核的な財務または業務指標との関連性を示す数値として有効です。

しかし、「計測して終わり」では、せっかく取得した数値を改善に活かすことはできません。それでは、各段階の KPI はどのように改善すればよいのでしょうか?

その答えは、各ステージで従業員のフィードバックを収集し、全体的なデータとして分析する ことにあります。全体的なデータとして分析することにより、面接から退社までの従業員エクスペリエンスをマッピングし、各ステージにおける多様な活動の関連性を明らかにすることができます。

各ステージの KPI は、ライフサイクルの同じステージや異なるステージのKPIに影響を与える、相互依存関係にあります。

例えば、「立ち上がり期間」の短縮は、生産性に明らかな影響を与えるだけでなく、エンゲージメントにも影響を与えます。同様に、従業員のエンゲージメントが高まれば、離職率が下がり、生産性が向上することが分かっています。

これらの KPI を個別に観察すると、組織の中核的な業務指標に与える影響を過小評価する危険性があります。しかし逆に、それぞれのデータを全体的に・一緒に見ることで、人事チームは、ライフサイクル全体にわたる改善の複合的な影響を見ることができ、どの行動がビジネス全体に最大の影響を与えるかを特定することができるようになるのです。

従業員エクスペリエンス プログラム 設計ガイドブック