顧客セグメンテーションは、企業が自社の戦略や戦術を顧客と密接に連携させ、よりよいターゲットを設定するための効果的なツールです。顧客は一人ひとり異なり、カスタマー ジャーニーも異なるため、単一のアプローチではすべてに対応できないことがよくあります。顧客セグメンテーションが重要なプロセスとなるのはこのためです。
まずは、顧客セグメンテーションとは何かを正確に理解することから始めましょう。
顧客セグメンテーションとは?
顧客セグメンテーションとは、人口統計や行動などの共通の特徴に基づいて顧客を分割し、その顧客に対してより効果的なマーケティングを行うためのプロセスです。
これらの顧客セグメンテーション・グループは、マーケティング・ペルソナの構築の議論を始める際にも使用することができます。なぜなら、顧客セグメンテーションは通常、ブランドのメッセージやポジショニングを顧客にどう届けるか、またはそれらの改善に用いられるからです。したがって、マーケティング・ペルソナが顧客セグメントとどう連携しているかが、効果的なプランの実行に欠かせません。
マーケティングの「ペルソナ」は、定義上、顧客セグメントを擬人化したものであり、企業が異なる顧客セグメントに合わせて複数のペルソナを作成することも珍しくありません。
しかし、擬人化を実行するためには、ビジネスのベースとなる強固な顧客セグメンテーションが必要です。次のセクションでは、顧客セグメンテーションと市場セグメンテーションの違いを解説し、セグメンテーションを可能な限り正確に行う方法をご紹介します。
顧客セグメンテーションと市場セグメンテーション
顧客セグメンテーションと比較すると、市場セグメンテーションはより一般的で、市場全体を見渡すことができます。マーケットセグメンテーションが市場全体に関係するのに対し、カスタマーセグメンテーションは市場の中のパーソナルな部分に焦点を当てます。
例えば、自動車販売で、通常企業向けの販売が中心になる場合、顧客セグメントはB2Bとなり、大型の商用車を購入する可能性のある顧客と、小規模企業向けのバンを購入する可能性のある顧客が存在します。この2タイプの顧客は異なるニーズを持っており、異なる対応が求められるでしょう。
しかし、市場全体をセグメント化するのであれば、「人を運ぶための車を必要とする人」「スポーツカーを買う人」という分け方もできます。どちらがより広い範囲をカバーできるでしょうか。
この場合、ほとんどのマーケティング担当者は市場全体をカバーするつもりはないため、売れる要素に焦点を当てる方が効果的です。市場全体ではなく、1つか2つの焦点を絞った顧客層をターゲットにすることで、より良い収穫を得ることができるでしょう。
顧客セグメンテーションの種類
セグメンテーションには、慎重に検討すべき多くの要素があります。これらは一律ではなく、自社のビジネスに合ったものを選ぶ必要があります。
顧客セグメンテーションは、2つのタイプに分けられます。
顧客属性に応じたセグメンテーション
顧客を理解するプロセスは、一般的には、人口統計学なものから始める場合が多くあります。これには、以下のような要素が含まれます。
- 年齢
- 居住地域
- 都会に住んでいるか、郊外に住んでいるか
- 収入
- 交際/婚姻状況
- 家族構成
- 職種
顧客の行動によるセグメンテーション
また、消費額(Share of Wallet)、頻度、商品によって顧客をセグメント化することもできます(これにより、消費額をどれだけ増やせるかを確認することができます)。これは、より行動にフォーカスしたものです。
これをさらに細かく分類すると、行動は様々で、以下のように分けて見た方がいいかもしれません。
- バスケットサイズ
- 財布内シェア(Share of Wallet)
- 使用・利用期間の長さ
- 長期的なロイヤルティ(Share of Walletと使用・利用期間の関数)
前述したように、ここで使うべきアプローチはひとつではありません。業種や規模によって異なります。例えば、スーパーマーケットでは、財布内シェア(Share of Wallet)を100%獲得することは非常に稀なことなので、どのような商品を買っているかといった行動に着目し、顧客にもっと(量を)買ってもらう、あるい、よりプレミアムな商品を買ってもらう、単価アップの戦略を実行することになります。
しかし、保険では100%財布内シェア(Share of Wallet)が一般的であり、多くの会社はこれを達成するため、例えば既存の住宅保険やペット保険に自動車保険を追加する顧客にインセンティブを付与するなどのキャンペーンを行っています。例えば犬を3匹飼っている場合、3回に分けて保険に入るより、同じ保険に入りたい(入りやすい)はずであると考えられます。
これが金融サービスになると、ニュアンスがまた異なってきます。一般的にいって、普通預金口座やクレジットカードは複数保持しているケースがほとんどです。
顧客セグメントに応じて、異なるアプローチでターゲティングする必要があります。
なぜ顧客をセグメント化するのか?
顧客セグメンテーションは、より効果的なマーケティングや販売に役立つため、よく使われる手法です。これは、顧客のニーズと欲求をより深く理解することができるからです。
効果的な顧客セグメンテーションは、顧客の生涯価値を向上させることができます。つまり、顧客はより長く使用・利用し、より多く消費してくれるのです。
顧客をよりよく理解することで、より効果的なターゲティングが可能になり、より大きなロイヤリティを獲得することができます。顧客がスキンケア製品を買うために年に2回キールズを訪れる(1回の購入金額が大きい)代わりに、セグメンテーションによって、顧客が小さな購入金額で年に5回戻ってくるようにするためのインサイトを得ることができます。1回あたりの購入金額は小さくなりますが、商品や店舗、接客機会などの接点がより頻繁になるため、顧客ロイヤリティが増加します。
一回限りよりも、少しずつ、そして頻繁に行う方がより効果的です。行動も、より予測しやすい指標となり、ビジネスの判断材料になります。ロイヤリティの向上だけでなく、顧客の中での商品やサービスの価値を高める、つまり顧客のライフタイムバリューを高めることができるのです。
顧客をセグメント化する方法
セグメントの方法についてのヒントは、ぜひ以下をご覧ください。
まず、市場に関する業界全体のデータ、次に自社の顧客層に関するデータを掘り下げてみてください。
次に、顧客グループの中の集合している部分を見ます。この段階でセグメント化を開始し、特定の顧客同士を結びつけているものは何かを調べます。どのような相関関係があるのでしょうか。相関関係があるかどうかは、どのように判断するのでしょうか?あるいは、相関関係を見つけるにはどうしたらよいのでしょうか。
データを見るときの構造として、以下の項目を使い、それらがどのように結びついているのかを見てみましょう。
- どんな人か
- どんなことをしている人か
- 求めるものは何か
例えば、音楽のような、ある一定の層と強い結びつきがある商品もあれば、食品のような万人向けの商品もあります。
このようにデータを掘り下げる際には、状況や目的に応じて、具体的に説明することが有効な場合もあれば、そうでない場合もあることを念頭に置いてください。具体的なセグメンテーションを行うべきか、それとももう少し広い範囲でセグメンテーションを行うのが適切なのかを判断するために、以下にいくつかのポイントを挙げます。
この3つの要素の相関を把握するためには、エクスペリエンス データ活用が不可欠です。
エクスペリエンス データの入手方法について
エクスペリエンス データを収集する方法は複数存在しますが、大まかに直接的または間接的な流れに分けられます。全リストは以下をご覧ください。
直接的なものには、通常、顧客に対するアンケート調査や、直接的な回答が含まれます。間接的なデータとは、直接的には得られなかった、顧客ベースの行動などの客観的な情報です。
直接的
- 定期的な調査
- 店舗訪問後アンケート
- 購入後アンケート
- 製品満足度調査
- ブランドトラッキング調査
間接的
- VoiceIQ
- ORM/ソーシャルリスニング
- フロントライン フィードバック
クアルトリクスの CustomerXMは、主要なトレンドと行動のドライバーを理解するために活用できます
相関関係を見出し、顧客セグメントを作成したら、それを使ってブランドのポジショニング、メッセージング、Go to Market戦略を決定します。このような顧客セグメントによってもたらされた貴重なインサイトによって、ビジネス目標を効果的に達成することができます。
顧客のカスタマージャーニーはそれぞれ異なります。異なるセグメントの行動をよりよく理解することで、異なるセグメントに対応したジャーニーを作成し、顧客ができるだけ簡単にジャーニーを完了できるようにすることができます。
顧客セグメントと目的を一致させることで、顧客セグメントをどの程度具体化すべきかの指針になります。例えば、eBayのような大きなサービスが、すべての人をターゲットにした新しいサービスを提供するのと、小規模で独立したビジネスだけをターゲットにしたサービスとでは、顧客層が大きく異なります。
顧客セグメンテーションを行い、それを目的に沿うようにするためには、何を達成したいのかを自分に問いかける必要があります。
- 競争他社のリアクションの影響なのか?
- 新しい製品が出てきたのか?
- 市場を拡大したいのか?
これらは、セグメンテーションをどの程度具体的に行うべきかを決定するのに役立ちます。
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