優れたブランド名が、トップクラスの製品やサービス、また最高の顧客体験や従業員体験と結びついたとき、市場で注目される存在となり、勝利へのコンビネーションが生まれます。
願わくば、ブランド名は人々の記憶に残り、会話に頻繁に登場し、そして消費者の共感を呼ぶものであってほしいものです。だからこそ、最初から良いものを選ぶことが重要なのです。
アマゾンは当初「アブラカダブラ」を縮めて「カダブラ」と呼ばれる予定でした。しかし、「カダバー」と聞き間違えられ続けたため、その名前は棚上げされました。当時のウェブ・リスティングはアルファベット順だったため、ジェフ・ベゾスは、彼の企業ビジョンであるアマゾン川の巨大さを反映する「A」で始まるものを求めていました。
事業が膨大な量の製品とサービスを提供するようになってから、この名前をしっくりくるようになりました。また、スティーブ・ジョブズはアップルを思いついたとき、フルーツ中心の食生活を送っていたといいます。AppleがAtariより先にアルファベット順でウェブに掲載されたことは、おそらく重要なことだったのでしょう。
アディダス、ネスレ、ナイキ、マクドナルド、ソニー、フェイスブック、イケア、ペプシなど、世界で最も有名なブランドのロゴタイプを上記に集めてみました。
もちろん、私たちはスティーブ・ジョブズのような人間ではありません。そうかと言って、ブランドのネーミングは、自分が考えたものが「良い」と定義することもできないのです。ブランド・ネーミングは、オーディエンスにメッセージを伝えてくれるからこそ重要なのです。優れたブランド名は、現在の顧客や潜在的な顧客に次のようなことを伝えてくれます:
- あなたを識別する
- あなたが提供するものを理解する
- 顧客との関連性を理解する
想起しやすく、特徴的で、感情に訴えかけるブランド名は、より記憶に残りやすく、ビジネスを成功に導く可能性が高いです。
このプロセスそのものは他の分野にも当てはまります。顧客は常に、購入プロセスを手助けしてくれる便利な方法を求めていますし、再購入するほどブランドを信頼しているとなれば、企業としても大きな助けになります。強力なブランド名は差別化にも貢献し、ブランドのアイデンティティとしても非常に大きな財産となります。
しかし、識別性と差別化の違いを忘れてはなりません。どちらも不可欠である一方、それぞれ独自の意味を持っています:
差別化
差別化は顧客が他のブランドではなく、そのブランドを選択する理由や利点です。
識別性
識別性はブランドが他のブランドより際立っており、容易に識別できることでです。
NikeとAppleは、ブランドのネーミングとブランディング全般において、この2つの資質を兼ね備えている良い例でしょう。両者とも、名前、ロゴ、製品デザイン、ウェブサイト、小売店において容易に認識できます。そうすることで競合他社と差別化しているのです。
行動科学者でベストセラー作家のRichard Shottonが著書『The Choice Factory(邦題:買わせる心理技術)』で説明しているように、研究によれば、私たちは物や人、そしてより特徴的な場所に惹かれるといいます。これは行動反射なのです。
優れたブランド名が重要な理由
Google、 Uber、 イケア、スターバックス。ペプシ…これらの名前を聞いただけで、それぞれの企業が何を提供しているのかが瞬時に想像できるでしょう。適切にネーミングすることで、どのブランドでも長期的な価値を与えることができます。
最高のネーミングとは
- 覚えやすく、ブランドを瞬時に記憶させる
- 消費者が何をする会社なのか、何を提供する会社なのかを理解しやすい
- 興味をそそる
- ブランドに対する好意的な感情や忠誠心を象徴する
- 特徴的で、競合他社と差別化できる
- SNSで共有できる
- 「ブランド」で空間、部門、業界を包括的にイメージできる
- 柔軟性があり、製品やサービスを簡単に拡大・追加ができる
- 商標登録されているため、他の誰にも使用されない
世界で最も優れたブランドは、その名前を販売している製品やサービスの代名詞にしています。実際、人々は製品だけでなくブランドも購入しているのです。また、それが従業員の体験、顧客の体験、収益にプラスの影響を与えることさえ証明されています。
ブランド名戦略の重要性
人生には、純粋な運命的偶然によって、天才的な問題解決策に出くわすことがあります。しかし、ブランド名には、そのような期待を膨らまさない方が賢明です。もちろん、ランダムに名前を見つけて、良さそうなものを選ぶことはできます。しかし、それは適切な戦略的ブランド・ネーミング・プロセスからは程遠く、後々問題を引き起こす可能性も出てきます。
ブランド名に戦略がなければ、ネーミングそのものはさまざまな面で不利になってしまいます。例えば、今後ビジネスを拡大できないかもしれませんし、ビジョンを明確に表現できないかもしれません。最悪の場合、顧客や従業員に嫌われる可能性すら潜んでいます!
しっかりとした戦略的なブランドネーミング・プロセスは、こうした問題をすべて軽減してくれます。その結果、経験則に裏打ちされた、ターゲット・オーディエンスに覚えてもらえるようなブランド名が生まれるのです。
ここで、簡単な統計を2つ挙げてみます:
顧客があなたのブランド名を覚えるには、5~7回見る必要がある。
第一印象を与えるのに7秒かかる
だからこそ、目立つことが重要なのです。ブランドネームは、その印象回数(そして印象に残るまでの時間)を減らすための努力が必要なのです。
よくあるブランドネーミングの間違い(と、それを避ける方法)…
優れた名前がすべての仕事をしてくれると考える
ブランド名は、ブランディング全体において非常に重要な役割を果たしてくれます。しかし、ブランド名がすべての仕事をこなすわけではありません。むしろ、ブランド名は、ビジュアル/デザイン、マーケティング、カスタマーエクスペリエンス、そして商品力と一心同体となって機能します。これらビジネスにおける全ての側面が、最終的にブランドを構築し、ターゲットとなる人々の共感を呼ぶのです。
すべての人々が気に入らなければならないと考える
ブランドネーミングのプロセスには、より多くの人に関わってもらったほうがいいですが、そうかといって絶対に全員が気に入る名前を選ぼうと意気込むのは賢明ではないでしょう。どんなに厳密な根拠に裏打ちされたブランド名であっても、名前はあくまで主観的なものです。重要なのは、全会一致の魅力を求めるのではなく、大多数の人が気に入る名前を見つけることです。
ブランド名の命名プロセスと戦略を明確にしない
繰り返しになりますが、ブランド名を長続きさせ、成功を収めるには、感情的なものであってはなりません。KPIの追跡を含め、科学的なブランド命名プロセスの一環としてブランド名を選択することが極めて重要です。
ブランドのネーミング戦略: ネーミング・プロセスの説明
では、ブランドのネーミングプロセスとは一体どのようなものでしょうか?ブランド名を感覚で簡単に決める場合もあるかもしれませんが、実際の戦略的ブランド命名プロセスをたどるとするならば、どのように進めていけばよいのでしょうか?また、優れたブランド名によって、ブランド構築戦略全体にどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、人々に親しまれ、覚えてもらえるブランド名を作るための5ステップをご紹介します。
ブランドのネーミングプロセス1:明確な目標設定
ブランド名は、ブランド全体の延長線上にあるものなので、まずブランド名に何を求めるかを決める必要があります。
単なる会社名なのか、それとも製品ラベルやサービス名にも使うものなのか、ブランド名をどのような目的で使用したいのかを決めます。もちろん、利害関係者にこのことを説明する必要も出てきます。
ブランドネーミングのプロセス2:コア・アイデンティティの定義
ブランド名は、その会社が何を目指しているのかを表しています:
- あなたが何者であるか
- 人々があなたのビジネスに出会ったとき、どう思われたいか
- 顧客のニーズにどのように応えるのか
- 従業員が納得するビジョンを持っているのか
これらのニーズや価値観が何なのか、どうすればそれを満たすことができるのかがわからない場合は、市場調査を行うと明確になります。そのブランドがどんな立ち位置にあるのかがわかったら、次のことをじっくり考えてみてください:
ブランド目的とブランド使命:
これは、その会社が存在する理由となるものです。つまり、特定の問題を解決したり、特定のニーズや顧客の需要に応えるために、どんなことをしているのかを意味します。総じて、これがブランドが意図する真の目的です。まさに、ビジネスとしての意思決定がぎっしり詰まっている部分でしょう。
ブランド・ビジョン:
将来はどうなるのか?従業員や顧客のために、最終的なゴールや目指すべき未来の状態を掲げることが重要です。実際、ビジネス戦略を現実のものにするのに役立ちます。
ブランドの属性:
ブランドを支える柱は何か?ビジョンは何に基づいているのか?「楽しい」、「使いやすい」、「プレミアム感がある」?これらを明確にすることで、あなたのブランドを競合他社から際立たせることができます。
ブランドの個性:
あなたのブランドはターゲット顧客にどのように受け止められているのか?ブランドを表現するために、どのようなイメージ、色、フォントを使うのか?どのようなトーン・オブ・ボイス(TOV)がブランドを最もよく表しているのか?
ブランドの価値観:
そのブランドが持つ価値観は何ですか?そもそも企業は、そこで働く人々があってこそ成り立つものです。ブランド・バリューは、誰もが生き生きと働ける企業文化を創造するための枠組みです。ブランドバリューは従業員の体験にとって不可欠であり、適切な人材を採用し、会社が成長するのと一緒に彼らが自分らしさを磨くことができるのが望ましいです。また、ブランド価値は、職場における行動やビジネスにおける行動を規定する原則でもあります。
ブランドネーミングのプロセス3:ユーザーペルソナの作成
ユーザーペルソナは、典型的な顧客を架空の人物として表現したものです。まず、ブランド名のブレインストーミングを始める前に、顧客の視点でアイデアをテストするための明確なユーザーペルソナを設定しましょう。
誰のために会社をブランディングするのかが分かれば、適切な名前を選ぶ手助けとなります。ユーザーペルソナは、製品やサービスを売りたい相手を理解することにもつながることにもつながりますし、何より顧客の心に響く名前を選ぶのに役立ちます。
ブランドネーミングのプロセス4:ブランド名をつける
ここからが楽しい作業です。アイデンティティを構築する際には、利害関係者、チーム、潜在顧客などと協力して、全体像を把握できるよう様々な意見を取り入れましょう。
主要な利害関係者(ステークホルダー)とクリエイターを集め、ブランドを象徴する言葉(フレーズ、名前、場所、形容詞)を考えることから始めて下さい。このように、あらかじめ構造化された方法で行い、特定のカテゴリーを通してアイデアを枠にはめてみるとスムーズに作業が進みます。ぜひ、試してみましょう。
個人名
これは、Michael DellやWalt Disneyのような創業者のファーストネームやラストネームのことです。あるいは、会社の創設に重要な役割を果たした人物の名前の場合もあります。
サービスベース
Deliveroo、YouTube、Redditのように、何をする会社なのかを説明する言葉を意味します。
略称
KFC、MTV、Duracellのように、名前やフレーズの省略語です。IKEAのIngvar Kamprad Elmtaryd Agunnaryd(イングヴァル・カンプラード・エルムタリッド・アグンナリッド)は、IKEAという頭文字を使うまで、お洒落な響きを持っていませんでした。
比喩
ビジネスとして、これから創造しようとしている未来の状態や感覚を象徴する言葉: Verizon (ベライゾン)、Fanta (ファンタ)、Patagonia (パタゴニア)。
Etsy、Google、GoDaddy、Skypeなど、ブランド名のためだけに単語を作ることは、ややギャンブル的になる可能性があります(簡単に正しい読み方で読んでもらい、自然に記憶されるかがまだまだ課題)が、作った単語の.comドメインから容易に利用できるので、実際は非常に実用的なレベルで役立ちます。
まず、ブランドがアピールする言葉のリストを作ることから始めましょう。これはブランド名の作成に役立つだけでなく、ロゴやその他のブランド資産の作成にもつながります。名前だけでなく、ブランドの個性を明確にするのです。
選んだ名前が使用可能かどうか、他の誰かが使用していないか、商標登録されていないかをチェックすることもお忘れなく!
ブランドネーミングのプロセス5:アイデアをテストする
適切で使用可能なネーミングのリストができたら、顧客と社外を対象に、テストを始めてみましょう。それぞれ異なる視点を得ることで、ネーミングでの失敗を避けることができます。ブランド名には以下が必要です:
- スペルや発音が簡単であること
- 電話での響きがよく、明瞭であること
- 混乱を避ける名前であること
- ブランドの個性を反映すること
- 利用可能なURLがあること
アンケートやフォーカスグループ、インタビューなどを行い、どのブランド名が反響を呼び、どのブランド名が反響を呼ばないのか、をチェックします。また、分析ツールを使ってネーミングに潜むインサイトを引き出し、オーディエンスにとって重要な要素を優先するように努めて下さい。
ブランド名の候補を分析したら、どのブランド名が最もオーディエンスに響くかを見ることができます。このフィードバックをもとに、必要であれば改善しましょう。また、名前の長さ、トーン、また異なる言語や文化的なネーミングが原因で、顧客に響かないかもしれないので、その場合はその理由を評価する必要があります。
そして、競合他社が使用できないように、ブランドを商標登録しましょう。
適切なツールでブランドを立ち上げ、成長させよう
ネーミングが確定したら、ブランドを成長させることに集中しながら、その努力がどのように報われたのかを確認することも重要です。ぜひ、ブランド体験プログラムを使って測定し、進捗を追跡しながら、努力の成果を確認していきましょう。ブランドトラッカーを使えば、以下のことができるようになります。
- ブランド認知度や検討度など、ブランドの重要なKPIの測定
- 競合他社とのブランドの違いを把握する
- オーディエンスに響く(あるいは響かない)主な属性を特定する
- ブランドの認知度やその他の重要な目標を向上させる原動力を見つける
- ソーシャルデータやレビューデータから短期的なトレンドを把握する
- 収益や広告費などの運用(O)データを統合し、ブランド戦術をビジネスの成果につなげる
実際、アップルでもナイキでも、ブランドエクスペリエンス ツールを使えば、ブランドが設定した目標に向かって正しい道を歩んでいるかどうか?一目瞭然でわかります。
一貫した強さでブランドでロイヤルティを高める
それでも、本当に心に響くブランド名に到達することは、ビジネスサクセスにおいては、ほんのパズルの一部に過ぎません。もちろん、ブランド名はマーケティング、ビジュアル・デザイン、その他の要素と並んで重要ですが、ブランドがすべての要素と一体感を持つことで、はじめて顧客ロイヤルティに大きな影響を与えることができることを忘れないようにしましょう。
すべてのプラットフォームでブランディングに一貫性を持たせることができると、収益が最大23%増加することをご存知でしょうか?
人々は、ブランドが発するビジュアルやインタラクティブな部分を含め、どこに行っても同じ体験ができることを期待しています。したがって、ブランディングとブランド体験において統一されたアプローチを確保することは必須なのです。
アンケートの実施、ソーシャルリスニングプログラムの実施、Qualtrics BrandXM が提供している常時フィードバックを活用すれば、ブランドアイデンティティ全体の強さと統一性を測定することができます。