XM 推進に必要不可欠な 4 つのアクション ループ
お客さまや従業員のフィードバックやインサイト (洞察) をもとに行動を起こす際に、キーワードとして頻繁に登場するのが「インナーループ」 (Inner Loop) と「アウターループ」 (Outer Loop) です。一言でいうと、インナーループとは「フィードバックを寄せてくれた人に対応すること」、アウターループとは、「インサイトによって明らかになった問題を起点に根本から解決すること」をそれぞれ指します。
どちらも重要であることは自明の理ですが、さらに重要なのは、両ループは、一度回せば解決ではない ということです。実際には、「即時対応」「継続的な改善」「プロセスの統合」「戦略的な意思決定」の、4 つのアクション ループを継続的に実行する仕組みが必要となります。
今回の記事では、エクスペリエンス管理 (XM) の推進に欠かすことのできない 4 つのアクション ループを、CX(カスタマー エクスペリエンス)の具体例を交えながら解説します。
XM プログラムの基礎となる 6 つのコンピテンシー
以下の図は、XM (エクスペリエンス管理)プログラムの基盤となる 6 種類のコンピテンシー (能力) と、各コンピテンシーにおける主要な行動を図にしたものです。
「計画」「実現」「発足」「可視化」「対応」「破壊」の 6 つの XM コンピテンシーを習得することにより、得られたインサイトを最大限に有効活用することができます。また、効果の増幅も期待できます。
この 6 つの各コンピテンシーには、それぞれ 3 つまたは 4 つの関連スキルが存在します。このうち、インサイトに基づいて実際に行動を起こすステップである「対応」コンピテンシーには、4 つのアクション ループを実行するスキルが求められます。
ここでは、「飛行機内で希望の食事を選べなかった」というお客さまのクレームに対応する CA を想定して、それぞれのインサイトに基づく「ループ」を見ていきましょう。
インサイトに「対応」するための
4 つのアクション ループと、その構築方法
即時対応 (Immediate Response): インサイトには、現場ですぐに何らかの対応をする必要があるものが存在します。例えば、フライト中に希望の食事を選ぶことができなかったお客さまから「残念だった」というフィードバックを受けたとします。客室乗務員はお客さまのご希望に添えなかったことを謝罪し、次回の搭乗時に利用できるクーポンを提供するかもしれません。 これが一般的に言われる「クロージング・ザ・ループ」です。
しかし、即時対応スキルには、他にも 2 つの要素が含まれています。まず、「フィードバックを直接寄せていないお客さまにも、同じ思いの方がいるのではないか?」という可能性を考えることがあります。そして、「食事の選択肢がもうないことに対して何ができるのか?」という問いもあります。
即時対応できることとして、例えば 2 回目の食事の配布時には、メニューを選ぶことができなかった列のお客さまが優先的に選べるようにする、またはドリンク提供の方法や順番を工夫するなど、現場ですぐに実行できる対策があるかもしれませんね。
この2つの要素に即時対応するために、現場スタッフに権限を持たせる ことも忘れないようにしてください。
継続的な改善 (Continuous Improvement): 個々の状況にそれぞれ対処することは重要です。しかし、継続的に洞察から学び、改善ポイントを特定し、優先順位をつける能力を構築することも、同様に重要です。これは、前述のとおり「アウターループ」活動と呼ばれます。
機内食の例えでいうと、「希望していた食事を選ぶことができなかった」という不満のフィードバックが繰り返し出てくるようであれば、食事の配布に関連する運営方法を改善する優先順位が高くなってくるでしょう。
例えば、季節や搭乗客の属性から人気メニューの比率を調整する、あらかじめ食事内容のリクエストを電話で受け付けるなど、新しいプロセスを構築することが考えられます。
プロセスの統合 (Process Integration): 「あの飛行機会社は機内食のバラエティが少ない!」など、機内食のご希望がかなわなかったことを理由として、他の会社に乗り換えてしまうお客さまも、中にはいらっしゃるかもしれません。もし、このようなお客さまの存在がデータ分析で判明したら、あらかじめお客さまのご要望を予約時にウェブ経由で収集し、その情報をもとに、飛行機に搭載するメニューの配分を調整するというアクションが考えられるかもしれません。
加えて、過去データから「以前のフライトで機内食の希望がかなわなかった」お客さまの存在を把握できる仕組みを構築し、以前のフライトで起きてしまった良くない体験を挽回することができるような、手厚いサービスを提供することも可能になるかもしれません。
ここで重要なのは、DX 戦略の立案・実行と、DX の実践に伴うプロセスやオペレーションの変更、およびトレーニングを実行したり、自由に提案できる環境の醸成に至るまで、包括的に取り組むことです。
戦略的な意思決定 (Strategic Decision Making): インサイトは、オペレーションの改善に活用できるだけにとどまりません。組織の方向性や、投資すべき領域に関する重要な意思決定にも活かすことができます。
データを活用して、顧客ロイヤルティに機内食が与えるインパクトが高いことが明確化したとしましょう。この実証データを基に、戦略的に改善アクションに取り組むことができます。例えば…
・追加料金を支払うことで、1ランク上のお食事を提供することができるサービスを導入する
・搭乗されるお客さまに、搭乗時に食べたい機内食のメニューをお伺いし、お客さまの声をもとに、各路線でメニューを変更する
このようなアクションが考えられますね。
このようにアジャイル (迅速・柔軟) にアクションを実行しやすくするためには、以下のような環境づくりが必要となります。
・情報の一元管理
・関連部署がデータにアクセスできる仕組み作り
・メニュー開発・材料購買・調理担当との連携
・カスタマー サポートの拡張
などを含めて企業戦略・投資を見直します。
上記の機内食の例では、B2C の環境における 4 つのアクション ループを説明しましたが、これらのスキルはエクスペリエンス管理のどの分野にも適用することができます。例えば、この表は、レスポンス スキルが企業間カスタマー エクスペリエンス (B2B CX) や従業員エクスペリエンス (EX) の場面でどのように適用できるかを示しています。
これら一連の流れは、一度実行してそれで終わりではいけません。インナーループとアウターループを継続的に実行していくことで、自社独自のエクスペリエンスを創造・確立することができます。この流れは、他社との揺るぎない差別化に繋がっていきます。
つまるところ
平家物語の冒頭にも登場する「諸行無常」という言葉をご存じでしょうか。実用日本語辞典 には、『諸行無常の「諸行」は、因縁によってつくられるこの世の一切の物や事を指し、「無常」とは、常に移り変わり同じ状態にとどまらないことを指す。わかりやすく具体例を挙げると、金属が錆びたり人が成長して年老いたり、全ての物や事は常に周囲の環境と互いに影響を受けあいながら、変わったり壊れたりといった変化を続けていることを表現している』とあります。
世のすべてのものは移り変わります。だからこそ、常に顧客の声に耳を傾け、4 つのループを回し続けることが重要であるといえるでしょう。
聴くは一時の知恵、聴き続けることは一生の宝 です。
※このブログは、Qualtrics XMI から 2022 年 3 月 15 日に発行された "Build Four Action Loops to Respond to Insights" に基づいて執筆されたものです。
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