企業が ESG に投資すべき理由とは
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ESG (環境・社会・ガバナンス) という言葉が、サステナビリティについての議論や分析で頻出するようになりました。
ESG とは、企業の財務的な実行可能性と持続可能性を評価するために使われる、幅広い要素をまとめた概念です。ESGの枠組みを使うことで、ステークホルダーや投資家は以下のような事柄を把握することができます。
環境
組織は、周囲の環境にどれだけ配慮しているか:温室効果ガスの排出量を差し引きゼロにする 「ネットゼロ」 への取り組み、クリーン エネルギーの利用、廃棄物の抑制などがこれに含まれます。
社会
組織は、従業員や地域社会をどの程度サポートしているか:出自や経歴などの背景にとらわれない雇用や、組織で成功するための平等・公平な機会、雇用の安定、従業員の安全の提供、社会的な責任・影響などがこれに含まれます。
ガバナンス
組織運営は円滑か:明確なミッションを持つこと、そしてその内容を社内外での日々の業務に根付かせることが含まれます。
企業が ESG に投資する必要性とは
サステナビリティの時代に入り、財務的な目標達成だけでなく、ESG の目標到達度によって成功を評価しようと考える組織がますます増えています。実際に、S&P500 企業の 90% 以上、ラッセル1000企業の約 70% が何らかの形で ESG レポートを発行していることからも、その変化がうかがえます (G&A Instituteによる2021年「Sustainability reporting in focus」より)。
ただ、このような前向きな傾向が見られているとはいえ、目標を達成するまでにはまだやるべきことが多く残されています。企業が本気で変革に取り組まなければ、サステナビリティの目標を達成し、あらゆる人の繁栄を実現することは不可能です。
ESG が業績に与える 5 つの影響
ESG を重視することは、正しい行いであるだけでなく、ビジネスとしても大きな意味があります。2004 年以降、ESG を重視した投資は 10 倍に増加し、Gunnar Friede による 2015 年の研究では、ESG に取り組むことが財務的なリターンの向上に寄与するという総合的な検証結果が発表されています。
では、なぜ ESG に取り組むことで、財務的な業績が向上するのでしょうか?マッキンゼーによる 2019年 のレポートによると、ESG への取り組みは、次のようなメリットにつながります。
売上高の増加:より持続可能な製品やサービスを提供して、ESG に関する評判を高める企業は、B2B および B2C の顧客をより多く惹きつけることができます。
コストの削減:資源・エネルギーの消費や廃棄物の抑制により意識的に取り組むことで、コストを大幅に削減して、経費の上昇に対応できます。
規制や法的介入による影響の最小化:持続可能な経営を行うことで、法令違反による罰金のリスクを減らすことができるだけでなく、政府や関連会社からの評価が上がり、企業戦略の自由度が高まります。
設備投資や資本支出の最適化:将来的に環境問題を引き起こし、回収が不可能になるような投資を避け、より有益な機会に集中して投資することが可能になります。
従業員の生産性向上:ESG 目標を達成する組織で働きたいと考える従業員が増える中、持続可能な組織はより多くの人材を惹きつけ、従業員の意欲と貢献度を高めることができます。
人事部門にとって ESG 投資が重要な理由とは
ESG は、従業員の仕事との関わり方や感じ方に、大きな影響を与えます。ESG のいずれの要素も従業員エクスペリエンスに影響を及ぼすことが判明していますが、中でも 「社会」 の要素は人事部の役割にも本質的に関わっています。
特に重要な分野としては、以下が挙げられます。
+ 多様性:社会の実態を反映した従業員の確保に、責任を持って取り組む必要があります。
+ 公平性とインクルージョン:多様性の確保だけでなく、すべての従業員を公平・公正に扱うことも重要です。企業が公平性を推進することで、従業員は自分の考え方やスキルを含め、自分らしさを発揮して仕事をすることが可能になります。
+ 従業員の安全:職場で安全に働くことは、従業員の基本的な権利です。これは、すべての組織が常に念頭に置いておく必要のある概念です。
+ 従業員のウェルビーイング:パンデミックにより、従業員の健康やウェルビーイングへの配慮の重要性が改めて認識されました。健康とウェルビーイングの推進は、病気になるリスクを低減させるとともに、従業員のエンゲージメントと生産性を高めます。
+ 雇用の確保:雇用の確保も、組織の長期的な持続可能性に影響を与える、従業員エクスペリエンスの重要な要素です。自分の役割に安心感を抱く従業員は、より積極的に仕事に取り組み、ウェルビーイングの状態も良く、生産性が上がる可能性も高まります。
特に若い世代は、インクルーシブで責任感の強い企業で働きたいと考えるようになっています。ミレニアル世代は、社会への影響を積極的に考慮する企業へのロイヤルティが高く(Forbes、2019年)、88%が社会や環境に良い影響を与える機会があるほど、自分の仕事が有意義になると考えています。
つまり、持続可能な組織であることは、人材採用や従業員のコミットメント・成長の点で、競合他社に対して大きなアドバンテージとなります。
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