ワクチンの在庫が確保されたとして、
市民は接種する気があるのか
65歳以上のワクチン接種が4/12に開始される予定であると政府からの方針説明がありました。医療従事者のワクチン接種が始まり、新しいワクチンの在庫が続々と日本に到着しています。日々ワクチン接種のための体制が整ってきておりますが、一方で”ワクチンがあっても打たない”という人も一定数いることが想定されます。ワクチンの有効性や副反応については様々な検証結果や憶測が飛び交っていますが、私たち一人一人がワクチンを接種したいと思うかどうかは個々人の置かれている環境に大きく左右されるのではないでしょうか?
一足先にワクチン接種を本格的に開始した米国において、クアルトリクスは、ワクチン接種に対する意向がワクチン接種を呼びかけるメッセージの発信元と受取手側の属性でどのように変化するのかを調査しました。以下がその結果です。
一人でも多くの市民に
ワクチン接種をしてもらう
世界中の全ての国が、新型コロナウイルスの拡大を防ぐため、歴史上類を見ないレベルでのワクチン接種を行なっています。現在各国は、複雑なワクチンの配達プロセスと、確実に全ての国民がワクチンを接種させるという2つの難題に取り組んでいます。
新型コロナウイルスワクチンの在庫が確保され、広く一般の人々にとってより身近でいつでも接種できるものになったとしても、実際にワクチンが確実に接種され集団免疫を獲得できるかどうかは一人一人の市民に依拠するところが大きいです。Qualtricsは2020年12 月初旬に、デューク大学の政治学教授であるShunshine Hillygus博士と連携して、米国市民4,000人以上に対して新型コロナウイルスワクチンに対する受け止め方に関する調査を行いました。
今回の調査の結果、政府によるワクチン接種の呼びかけに関する広報戦略の見直しと強化が喫緊の課題であることが浮き彫りになりました。本調査に回答した35%の人がワクチン接種をするつもりがないと回答し、61%の回答者が各州政府が適切なワクチン接種のためのシステムを有していないと回答しました。
加えて、高卒以下の教育水準にある人の47%がワクチン接種を予定しているとの回答をしているのに対し、大学院または専門職学位の保持者の接種予定割合は84%であることが分かっています。政府は、メッセージを受け取る市民一人一人が異なる受け止め方をし、異なる行動をとるこの状況下において、どのような広報戦略を取るべきでしょうか。本調査の結果得られた示唆は以下の通りです。
ワクチン接種の意思決定におけるメッセージの重要性
メッセージの発信者の属性と受信者の属性によって、それぞれメッセージがどのように受け止められるのか調査を行いました。このテストでは、メッセージの発信者側を4つのカテゴリ(民主党の政治家、共和党の政治家、超党派の政治家、医師)に分け、それぞれの発信者からの4つの領域(統計情報、コミュニティ、感情、個人)に関するメッセージついての受け止め方の確認を行いました。カテゴリの定義方法の詳細は以下の通りです。
- 統計: 新型コロナウイルスの深刻さに関する統計情報を含むメッセージ
- コミュニティ: 予防接種を受けて周囲の人々の安全を確保しようというメッセージ
- 感情: 新型コロナウイルスの影響で、大切な家族や友人を失うリスクについてのメッセージ
- 個人: 予防接種を受けることで、市民個々人の安全を確保することの重要性に関するメッセージ
本調査の結果、メッセージを受け取った人の人種や民族、支持する政党によって受け取り方に大きな差が出ることが判明しました。
- 民主党員が統計に関するメッセージを受け取った場合、ワクチン接種を希望する割合が8%ポイント増加しました。(73% -> 81%)
- 共和党員が統計に関するメッセージを受け取った場合、ワクチン接種を希望する割合が10%ポイント減少しました。(63% -> 53%)
- 黒人(ブラックアメリカン)が感情的なメッセージを受け取った場合、ワクチン接種を希望する割合が13%ポイント増加しました。(54% -> 67%)
- 黒人またはヒスパニック系が感情的なメッセージを受け取った場合、ワクチン接種を希望する割合が17%ポイント増加しました。(45% -> 62%)
- 感情的なメッセージは、非ヒスパニック系白人のワクチン接種希望意思には影響を与えないことが分かりました。
予防接種を受ける市民の数を最大化するという目標を達成するため、全ての市民に対して画一的なメッセージを届けるのではなく、受け取り手に応じて最適なメッセージを伝える必要があるということが、本調査の結果判明しました。
信頼を得ている人物を活用して、メッセージの信頼性を向上させる
信頼できる人物からのメッセージであれば、人々はそのメッセージに基づいて行動を起こす可能性が高くなるということも、本調査の結果明らかになりました。「ワクチンを接種するつもりがない」と回答した人に対して、彼ら/彼女らのワクチン接種の可能性を向上させる要因は何かを問いかけた結果は以下の通りです。
- 42%の回答者が、かかりつけ医からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
- 34%の回答者が、信頼できる家族からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
- 34%の回答者が、健康衛生関連の専門家からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
興味深いことに、次のグループの人々がワクチン接種を推奨した場合はプラスの効果が低いことが確認できました。
- 19%の回答者が、宗教指導者からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
- 17%の回答者が、民主党と共和党の双方の政治指導者からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
- 16%の回答者が、地元の事業主からの推奨があればワクチン接種の可能性が向上すると答えました。
これらの情報を鑑みると、メッセージそのものが重要なだけでなく、メッセージの発信元も市民の行動を左右する上で重要であることが理解できます。適切なコミュニケーションのための媒体と発信者を特定し、一般市民へのメッセージを最適化するための投資を行うことでワクチン接種の割合を最大化することが、政府には求められています。
ワクチン接種の義務化は市民体験に影響を与える
新型コロナウイルスワクチンがより広く一般に接種されるようになると、経済が動き出し、市民は職場に戻り、日常生活が再開されます。大部分の市民は医療従事者に対するワクチン接種の義務づけを支持していますが、大規模イベントの開催や参加にあたっての接種義務についてはそこまで支持していません。
- 61%の回答者は、医療従事者にワクチン接種を義務付ける方針をある程度または強く支持しています。
- 54%の回答者は、飛行機に搭乗するためのワクチン接種の文書化を要求する方針をある程度または強く支持しています
- 49%の回答者は、すべての自治体の従業員にワクチン接種を義務付ける方針をある程度または強く支持しています。
- 48%の回答者は、公立学校に通うすべての子供にワクチン接種を義務付ける方針をある程度または強く支持しています。
- 45%の回答者は、大規模な公開イベント(コンサート、スポーツイベント)に参加するためにワクチン接種の文書化を要求するポリシーをある程度または強く支持しています。
- 33%の回答者は、学校がワクチンの接種を義務付けないようにする方針をある程度または強く支持しています。
本調査からのその他の発見事項
- 回答者の7人に1人は、新型コロナウイルスで亡くなった人を個人的に知っていると答えています。
- 男性の回答者の72%がワクチンを接種する予定である一方、女性の回答者の61%がワクチンを接種予定であると回答しています。
- 54%の回答者が、ホワイトハウスが新型コロナウイルスのリスクを十分に真剣に受け止めていないと回答しています
- 45%の回答者は、新型コロナウイルスに関して、メディアがリスクを大幅にまたは若干誇張していると回答しています。一方で、40%の回答者は、リスクを正しく理解していると述べています。
まとめ
ワクチン接種が本格的に始まった米国では、ワクチン在庫の確保だけでなく市民のみなさまにどうやって積極的にワクチン接種に行ってもらうか、というのが大きな課題として認知されつつあります。
これからワクチン接種が始まる日本においても、効果的なメッセージを最適な媒体で市民の属性に応じて届けることによって、高いワクチン接種率を達成することができると考えます。
クアルトリクスのワクチンナビゲーターは、市民のワクチン接種体験を向上させる取り組みを支援しています。
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