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従業員エクスペリエンス

アクションプラン策定の
基本ルール

(「EXあるあるシリーズ」その 6)

はじめに

今回は、いよいよ従業員意識調査を実施する際の一連のプロセスの中で、最も重要かつ難しいと考えられるアクションプラン策定に関する検討ポイントをまとめてみたいと思います。弊社がお客様から受けるご質問の多くは、最終的には何らかの形でアクションに結びついていきます。調査を実施すれば、何らかの結果を得られることは最初からわかっています。しかし、適切なアクションについては、調査開始時点はもちろん、結果を手にした後ですら、何をすれば良いのかわからないと悩む企業が少なくありません。本稿では、組織にとって意味のあるアクションを取るコツを考えてみましょう。

「EX あるある」シリーズ: 既出のブログはこちら
第 1 回: 従業員向け調査を実施するにあたって
第 2 回: 調査の実施時期を決めるための検討項目
第 3 回: 従業員向け調査の設問設計で知っておきたいこと
第 4 回: 調査結果の分析・解釈の基本ルール
第 5 回: 調査結果共有の基本ルール

なぜ、アクションプラン検討の
動きが止まるのか?

アクションプラン策定に向けて、検討の動きが止まってしまうのはよくあることです。しかし、実はその原因は必ずしも同じではありません。細かくみると、足踏み状態になる段階が異なるのです。

第一に、調査結果を手にして分析したものの、自組織の課題が読み取れないケース。何が課題なのかがわからないのですから、アクションも考えようがないわけです。まずは、調査結果の読み方、解釈の仕方を理解する必要があります。

第二に、調査結果から課題は抽出できたものの、それをマネージャーが一人で抱え込んでしまい組織内で共有できていないケース。これでは、組織内でアクションのアイディアを収集しようとしてもうまくいきません。もちろん、マネージャーのみで、有効なアクションプランを考えられるのでしたら問題になりませんが、それを実行する段階では、一般従業員の参画はあまり期待できないでしょう。自分たちが課題抽出や、アクションプラン策定に関与して、「なるほど」と納得しているわけではないのですから。

第三に、組織内で課題をしっかり共有できているものの、アクションプラン策定となると何をすれば良いのかみんなで考え込んでしまうケース。ブレスト的に、アクションのヒントになるようなアイディアを出し合うような習慣や仕組みがない場合に、誰も具体的なアイディアを出すことができず行き詰まってしまいます。

第四に、アクションの大枠は合意されたものの、いざ実行しようと思った時に、「誰が、いつ、何をする」といった具体的な要素がプランに欠けているケース。日常業務に追われる中で、調査結果に基づくアクションプラン実行は自然と優先順位が下がり、数ヶ月もすると誰も何も語らなくなるかもしれません。

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従業員がやってみようと感じることが
最初の一歩

上記の4段階について、最初の2つのステップ(結果の解釈と共有)は、適切なガイドが示され、マネージャーを中心に実行しようと思えば必ずできるはずです。調査結果に基づき2〜3の重点的な改善課題を明確にして、組織内でそれをしっかり認識している状態です。すると、残りはアクションプランの案出し、それを具体的に仕上げる際にどのようなアプローチが有効かということになります。

マネージャーのみで策定するアクションプランは、組織全体の取り組みとしてはマネージャーの視点に偏っていたり、従業員が上からの押し付けと感じる可能性もあります。一方、いきなり従業員に 「課題はこれだと提示」 して、「これを改善するアクションを各自考えて提案すること」 と呼びかけても、なかなかうまくいかないでしょう。各従業員が目の当たりにしている職場の現状、立場による認識の違いを確認した上で、自分たちでできそうなこと、日頃から試してみたいと思っていたことを出し合ってみて、具体的なプランに仕上げていくようなステップが必要です。

そのためには、組織内でマネージャーおよび従業員同士で十分な対話が不可欠です。最終的に、各自が所属組織で働く上で、直接的・間接的に何らかのプラスになると感じられなければ、その活動が組織に根付くことは期待できません。

形式的なプラン vs
実効性のあるプラン

上記のポイントを踏まえてまとめられたはずのアクションプランであっても、無意識のうちに表面的な計画で終わっていることがあります。単なる「課題の裏返し」に過ぎないアクションプランです。例えば、「チーム間の協力が十分されていない」 ことが課題、それに対するアクションは 「チーム間の協力を強化する」 というだけで、「誰が、いつ、どのように、何を」 するのかが明確化されていないようなプランです。ちょっと時間が経過すれば、誰も何も行動を起こしていない、あるいはそもそも何をするのか忘れてしまっているかもしれません。

これを防ぐためには、まず特定された課題について、いつどんな状況で発生しやすいのか、その背景を理解した上で、根底にある問題を改善するような対策を考える必要があります。

例えば、上記のチーム間の協力体制が課題として浮かび上がった場合を考えてみると、本来どういう場面で協力すべきなのか、それを阻害する要因は何なのか、互いの業務をどれだけ理解しているか、協力しないことでビジネス上どのような支障が生まれているのか。こうした背景をしっかりと押さえることで、取るべきアクションのアイディアが異なってくることはご想像いただけるかと思います。

実効性のあるアクションプランを策定するためには、目標設定でよく登場する 「S M A R T」 をチェック項目として活用してみると良いと思います。S(Specific:具体的)、M(Measurable:測定可能)、A(Achievable:達成可能)、R(Relevant:関連性)、T(Time-bound:明確な時間軸)という観点でチェックしてみて、なるべく多くの要素をクリアしているプランほど実行しやすいはずです。

意味がわかりやすい「S」や「T」を除くと、アクションによる成果をどのように把握するのか(M)、実行できる現実的なプランになっているか(A)、組織の戦略や方向性に一致しているか(R)、などが、検討段階で練られているほど、効果的な活動につながっていくと考えられます。

改善への期待と
地道な実行力が決め手

本稿では、アクションプランの策定にあたり、基本的な考えをご説明してきました。しかし、最終的に意味のあるプランが策定できたとしても、そのプランに沿って行動し始めるか否かは、組織によっても温度差があるように感じます。温度差を生み出す要因は、マネージャーを含めてその組織に所属している人々が、どれだけ納得している、あるいは、やってみたいと思っているかに尽きるように思います。

アクションが軌道に乗っている組織の特徴は、会社に指示されたから対応しているわけではなく、自分が所属する組織で、各自がより働きやすくなるとか、やる気が湧いてくるとか、もっと大きな成果を生み出せるようになるといった期待が、組織の中で共有されていることです。「アクションプラン」 というだけで大掛かりで難しい感じがするかもしれませんが、実際には複雑な仕組みの導入や、他社がどこも実施していない目新しい活動に取り組む必要はありません。日常業務でちょっと試してみようと思えば、翌週からでもみんなで実行できるような小さな工夫で十分です。

重要なことは、そうしたちょっとしたアクションであっても、マネージャーが従業員と連携しながら確実に実行していることです。その結果で、多少なりとも働きやすさを感じられるような成果に結びつけば、調査結果を起点とする改善のサイクルが定着していくはずです。地道な活動かもしれませんが、中長期的にこうした取り組みを継続させる企業と、放置する企業では、いずれ組織力に明確な差が生じるのではないでしょうか。

 

クアルトリクスの
従業員エクスペリエンス (EX) ソリューション

市川 幹人

クアルトリクス合同会社
EX ソリューション ストラテジー シニア ディレクター

人事・組織コンサルティング会社の従業員意識調査部門のリーダーとして、様々な業界のリーディング企業に対し、従業員の声を収集、分析、アクションプランニングまでの組織改革活動のサポートに豊富な経験。クアルトリクスにおいては、長年のリサーチ、コンサルティングの実績をベースに、従業員エクスペリエンス(EX)分野の活動の支援、社外への情報発信などを担当。

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