今日、従業員エクスペリエンスはテクノロジーと同じ意味を持ちます。従業員が現場でも、自宅でも、あるいはハイブリッドであっても、従業員が場所に関係なく自分の仕事をこなせるよう、権限を与えることは重要です。
そこで今回の記事では、従業員向け IT エクスペリエンスとは何か、なぜ従業員にとって重要なのか、優れた従業員向け IT エクスペリエンスの設計に着手する方法は何なのか、デジタル化が従業員体験にどのような影響を与えるのかをご紹介します。この記事では、優れた従業員向け IT エクスペリエンスの例をいくつか紹介しながら、コンセプトを解説します。
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従業員向け IT エクスペリエンスとは何か?
従業員向け IT エクスペリエンスとは、従業員が仕事をするために使用するテクノロジーとのタッチポイントの質を表しています。
次のような従業員向け IT エクスペリエンスの特定要素に注目してみて下さい:
- デバイスとプログラムの性能: どの程度速いか?従業員が仕事をこなせるようにうまく設定されているか?
- デバイスとプログラムの信頼性: アプリケーションがクラッシュすることはないか?コンピュータの動作が遅くなり、頻繁に再起動が必要になることはないか?会社から支給されたモバイル・デバイスは、会社のVPNにスムーズに接続できているか?
- モビリティ: 従業員がどこにいても、仕事関連のツールを効率的に使って働けるようになっているか?
- コラボレーション: 従業員がチームメンバーと効果的に協力できるようなプログラムになっているか?生産性は向上しているか?ビジネスの成功に役立っているか?
忘れてならないのは、従業員向け IT エクスペリエンスとは、従業員がテクノロジーそのもの(従業員がアクセスできるアプリケーションやデバイス)をどのように体験するかということだけでなく、IT部門がビジネスや個々の従業員とどのように協力し、問題やサービス要求に対処しながら、新しいテクノロジーを導入するか、そして、従業員を訓練し、そして従業員と協力して要件を理解し、実現するかを表しています。
なぜ従業員にとって従業員向け IT エクスペリエンスは重要なのか
多くの場合、人々は単に仕事を問題なく終わらせたいだけなのです。従業員は、社内外の顧客にサービスを提供しようとして、複雑な回避策を開発したり、不具合やボトルネックに対処したりすることを望んでいません。
不便な従業員向け IT エクスペリエンスは、従業員が思うように素早く、あるいは効率的に動けないことを意味しています。従業員は自己の進歩に支障があると社外に目を向けます。
優れた従業員向け IT エクスペリエンスのデザインは、どのように始めることができるのか?
すべての従業員エクスペリエンスがそうであるように、従業員向け IT エクスペリエンスを設計するためには、組織内で何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかをはじめに従業員に聞くことが大切です。そして、そのインサイトに基づいて行動を起こしましょう。
そのプロセスを始めるための7つのステップ:
ステップ1. ペルソナを作成し、従業員向け IT エクスペリエンス従業員ジャーニーを定義する
新入社員から IT 音痴まで、従業員のセグメントによってテクノロジーとの関わり方は異なります。だからこそ、従業員のペルソナを理解し、各メンバーがどのようにテクノロジーを学び、利用するかを理解することが重要です。それによって優れた従業員向け IT エクスペリエンスを構築することができるのです。
ステップ2. マネジメント変更に対する慎重で再現可能なアプローチを確立する
変化には不確実性が伴い、不確実性にはストレスが伴います。しかし、マネジメントの変更に対する一貫したアプローチを確立することで、従業員がテクノロジーの変化を受け入れ、デジタルトランスフォーメーションの取り組みをサポートすることができます。
ステップ3. ワークフローを最適化するために、部門間のチームを組み込む
たとえば、調達業務システムの導入を考えてみましょう。購買、法務、ビジネスなど複数の機能から十分なインプットがなければどうなるでしょうか。おそらく、システム的に特定の機能に大きく依存したワークフローとなり、ボトルネック、煩雑なプロセス、不十分なデジタル従業員体験をもたらすことになるでしょう。
ステップ4. ターゲット オーディエンスに理想的なプラットフォームをデザインする。
プラットフォームや システムをサポートするプロセスに基づいて設計するのではなく、人々が望むエクスペリエンスを念頭に置いて設計しましょう。まず、従業員のペインポイントを特定します。既存のプロセスのステップではなく、行うべき仕事に焦点を当てるデザイン思考のアプローチを採用すれば、人間を従業員向け IT エクスペリエンスの中心に据えることができます。これこそ最高のメソッドだと言えます。
ステップ5. 達成目標を測る KPI を設定する。
優れた従業員向け IT エクスペリエンスを提供するためには、ダウンタイム、導入時間、そしてチケット解決時間などの運用指標が重要であることは言うまでもありません。しかし、これらの運用指標を通じて推進しようとしている IT エクスペリエンスについて考えることも大切です。
従業員が自社のデジタル技術を信頼できるものと認識し、大規模な展開の中で最小限の混乱で運用がされる。さらにチケットの解決時間にも満足している ー これが理想の形です。実際、運用指標とは、活動が計画通りに実施されているかどうかを測定するものであり、経験指標は、従業員が受けるサービスによって能力を得られていると感じているかどうかを測定するものです。
ステップ6. 分散型のアイディア創出を促進しつつ、アイディアの吟味と優先順位決定は一元化する。
アクセンチュア (英語) が 800 以上の組織を対象にした調査によれば、一流のイノベーターたちは、働く人々の力を活用してアイデアを生み出し、それに取り組む一方で、それらのアイディアを最終的にどのようにプロジェクトや製品に移行させるかについて、一貫したアーキテクチャを採用していることがわかりました。ある事例では、ボッシュ・グループにおいて、たった6日間で1,800ものアイデアが従業員から生み出されたそうです。この組織では、選択されたアイデアの開発を一元化・形式化した上で、通常の役割から解放された従業員で構成されるグローバルでクロスファンクショナルなチームを結成してアイディアを出し合いしました。
ステップ7. IT投資をベンチャー キャピタルのポートフォリオのように管理する。
ブルーチップ投資(実現可能性が高いがインパクトが大きく、実施に時間がかかる)、クイックウィン(インパクトは低いが実現可能性が高く、実施期間が短い)、ムーンショット(実現可能性は低いがインパクトが非常に大きい)がそれぞれ健全に混在しています。
デジタル化は従業員のエクスペリエンスにどのような影響を与えるのか?
デジタル化、つまりデジタル技術を活用してビジネス機能を向上させることは、従業員の経験にさまざまな影響を与えます。
以下はその一例です。
- 面倒な手作業によるビジネス・プロセスの自動化:例えば、弁護士に代わって弁護士アシスタントが電話を録音し、音声認識技術に移行するなど。
- 直接ミーティングに出向く必要性が減少する:ビデオ会議ツール、デジタル、またはオンラインのホワイトボード、共同オフィス作業ツールを組み合わせます。
- 顧客と従業員のフィードバック結果をオンラインで収集し、ビジネスに提供する:デジタル・インターセプトと自動化されたライフサイクル・パルシングを使用することで、データを必要とするリーダーの手に素早くデータを届けることができます。
優れた従業員向け IT エクスペリエンスの例
優れたデジタル従業員向け IT エクスペリエンスを設計することの重要性をお分かりいただけたと思います。
上記で学んだことをどのように適用できるか、イメージするのに役立つ例をいくつかご紹介しましょう。
優れたデジタル従業員向け IT エクスペリエンスとは:
- 完全に実装されたシングルサインオンにより、複数のサイトにログインする必要なし。
- 迅速に対応、そして問題を解決するウォークアップ(バーチャルまたは対面)ITヘルプデスク。
- 従業員が提案/要求できる機能を提供し、さらに投票することを可能にする最前線のフィードバック ツール。
- 定期的に “テスト “フィッシングメールを従業員が受信する、組織化されたフィッシング対策プログラム。
- 個人ユーザーのために特別に設計されたかのようなCRMツール。
従業員向け IT エクスペリエンスの全体像を最初から正しく把握する必要はありません。IT部門がどのように問題やサービス リクエストに対応し、新しいデジタル ツールを導入し、従業員を教育するのか、また従業員と協力して要件を理解し、それを実現するかについて、従業員に経験だけでなく、テクノロジーそのものを活用してどのような経験をしているかを尋ねることが重要です。そして、その洞察を行動に移しましょう。
優れた従業員向け IT エクスペリエンスを設計するのに、万能なアプローチはありません。しかし、従業員は自分たちにとって最適な従業員向け IT エクスペリエンスを教えてくれます。
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