
Customer Experience
2025年は「つながりの年」に
私たちはあらゆる意味で「つながった(コネクティッド)」世界で暮らしていますが、逆に多くの組織はかつてないほど分断されています。データやテクノロジーが爆発的に普及する一方で、今日の企業は、顧客や従業員と真に持続的な関係を築くのに苦労しているのです。このような断絶は機会を損失させるだけでなく、企業責任も増大させます。そうした背景から、XM Instituteは2025年をつながりの年と位置づけました。私たちとともに、エクスペリエンス管理(XM)を通じて、組織がより深く、より有意義なつながりを築き、持続可能な価値を生み出す方法を探求する旅を始めましょう。
「つながり」を選んだ理由とは?
クアルトリクスは2022年をアジリティの年として、先行きの不透明な世界において、XMを活用して世の中の状況を把握し、それに対応する方法を提案しました。2023年は共感の年として、人間に焦点を当て、私たちが集団として互いに関わり合う方法を向上させる必要があることを伝えました。昨年、2024年は信頼の年として、ますます複雑化する環境のなかで、信頼を構築・維持することの重要性を強調しました。
そして2025年、組織は意図をもって意識的につながりを築いていく必要があると、クアルトリクスは考えています。
今日の企業は矛盾に直面しています。かつてないほど多くのデータ、ツール、交流の機会があるにもかかわらず、多くの企業が、従業員や顧客のニーズを満たし、ビジネスに有意義な結果をもたらすような、一貫性のあるエクスペリエンスの創出に苦労しています。その原因となっているのは、多くの場合、企業が個々のタッチポイントに対して定期的に改善を行うことのみを重視し、人々が体験する広範なジャーニーの中で、どのようにやり取りが結びついているかに目を向けていないことです。 そのようなアプローチは短期的には利益の増加につながるかもしれませんが、技術革新が加速し、経済の不確実性が増し、ステークホルダーからの期待が高まる環境下においては、このような分断された施策では、結果的にXMの戦略的・財務的価値の創出を妨げることになります。つまり、取り組みの方向性のずれや、やり取りの分断、リソースの浪費が生じ、根本的な課題に対処しない、表面的な修正に終始することになります。
つながりの力
XM施策の個々の要素を最適化することで、より質の高いデータの収集やプロセスの改善などを実現し、一定の価値を生み出せるのは確かです。しかし、エクスペリエンス管理の真の変革力は、それらの要素が意図をもって体系的に結びつけられたときに初めて発揮されます。
長いレジ待ち行列について顧客のフィードバックを収集している小売企業を例に考えてみましょう。データを集めるだけでも問題の把握に役立つかもしれませんが、組織がその顧客のフィードバックを、運用データ(人員配置、取引時間など)、従業員からのフィードバック(プロセスの効率性、活用支援など)、顧客の行動データ(来店パターン)といったショッピングジャーニー全体にわたるデータとつなげることができれば、真の変化がもたらされる可能性が高くなります。このようにデータをつなげることで、店舗マネージャーは、効率性を損なうことなく人員配置を事前に調整したり、レジで顧客と有意義なやり取りができるよう従業員を指導したりすることが可能になります。始まりから終わりまでのジャーニー全体を通じて、データ、プロセス、人をつなげることで、この小売企業は、運用を最適化しながら人間関係を強化する、体系的な改善を行うことができるでしょう。
このように一貫性をもって各要素を統合することで、それぞれの要素の価値も高まっていきます。データソース間、プロセス間、チーム間などでより多くのつながりが確立されれば、システム全体の価値が飛躍的に高まり、より深い理解、より質の高い意思決定、より迅速な対応、より強固な連携が可能になっていきます。このようなつながったエコシステムを構築するにあたって、クアルトリクスは以下の3つのつながりに着目することが重要だと考えています。
- 戦略的なつながり:自社の取り組みを組織のビジネスやブランドの目標に直接結びつけることで、分断されたXM施策を戦略的な推進力へと変えることができます。
- 運用的なつながり:技術的・プロセス的なインフラを確立することで、組織としての体系的な把握・提供・改善を実現できます。
- 人間的なつながり:人と人との真のつながりを育み、持続的な関係を構築することで、インサイトから有意義な変化を起こすために必要な共感、理解、協力が生み出されます。
戦略的なつながり
XM施策を成功させるには、エクスペリエンス管理と、組織の核となるミッションおよび事業目標との間に、明確なつながりを確立する必要があります。 つまり、原則やビジョンから統治構造やロードマップまでのあらゆるXM施策の基本要素を、組織の戦略的目標に沿ったものにする必要があるということです。そのつながりが強いほど、リーダーは、XMへの投資が組織の戦略的な優先事項にどのように貢献していくか、リソースの割り当てが事業目標に沿っているか、施策の成功を示す指標が組織にとっての有意義な成果を反映するものになっているかなどについて、明確に説明できるようになります。
戦略的なつながりを築くうえで重要なポイントを以下に示します。
- XM施策と組織の戦略をつなげる。会社の重要目標の達成に貢献するよう、XM施策が組織のミッション、ブランドプロミス、主要な優先事項に沿ったものになるようにします。
- XM施策とビジネスの成果をつなげる。エクスペリエンスの改善を、収益増やコスト削減といった主要なビジネス指標に直接的に結びつけることで、XMの価値を実証できます。
- インサイトと行動をつなげる。優先順位づけと効果的なアクションの実行についての明確なプロセスを確立して、XMのインサイトを具体的なビジネスインパクトに変換します。
運用的なつながり
技術面でのシームレスなつながりを築く力は、組織がXMの取り組みを拡大し、それを持続していくにあたっての基盤になります。個々のツールやデータソース自体も価値をもたらしますが、組織が統合された技術基盤を築き、エクスペリエンスを体系的に理解・測定・改善できるようになって初めて、真の変革がもたらされます。技術的なつながりを強めることで、組織はインサイトが孤立していた状態から、データが効率的に流れ、インサイトが適切な意思決定者へと体系的に提供され、大規模にアクションを自動化できる、一元化されたエコシステムへと移行できます。
運用的なつながりを築くうえで重要なポイントを以下に示します。
- 業務システムやアプリケーションをつなげる。システムを統合して、シームレスなデータフローと相互運用性を確保することで、拡張性のあるXMの基盤を築けます。
- 異なるソース間のデータをつなげる。すべてのタッチポイントとチャネル間で、関連する体験・行動・運用データを統合し、包括的なエクスペリエンスのビューを作成します。
- シグナルとワークフローをつなげる。XMのインサイトを運用ワークフローに統合することで、それを起点にアクションを自動化し、適切な情報を適切なタイミングで適切な人に届けられるようになります。
人間的なつながり
データやテクノロジーによって新たな可能性が広がっているとはいえ、エクスペリエンス管理とは最終的には人に関するものです。従業員と顧客、チームや部署、パートナーやステークホルダーの間に強固な人間的つながりがあることで、インサイトから有意義な変化を起こすために必要なコラボレーション、理解、共感が生まれます。人工知能や自動化の時代において、こうした本物の人間関係はますます重要性を増しています。AIはパターンの特定やプロセスの自動化には役立ちますが、信頼を築き、イノベーションを推進し、共感と創造性をもってエクスペリエンスを扱っていくためには、人間同士のつながりが重要です。人と人とのつながりが強ければ、インサイトは自然に届くべきところに届き、従業員はフィードバックに基づいて行動する力を与えられていると感じ、組織はただ効率を追求するのではなく、他とは違う人間らしいエクスペリエンスを生み出せます。
人間的なつながりを築くうえで重要なポイントを以下に示します。
- 従業員と顧客をつなげる。従業員も顧客も、本物のつながりを求めています。人と人との有意義な交流を促進することで、共感を育み、パーソナライズされた体験を生み出し、デジタル上での一時的なやり取りを超えた持続的な関係を築けます。
- 部門を超えてチームをつなげる。部門横断的な連携を促し、エクスペリエンス向上への責任を共有することで、組織の分断を解消します。
- 人とコミュニティをつなげる。人々が体験を共有し、互いに学び合い、支え合い、本物の帰属意識を感じられるようなコミュニティを形成することで、永続的なロイヤルティを生み出せます。
有意義なつながりを築くためのクアルトリクスからの提案
クアルトリクスは、組織がこのようなつながりを強化するのに役立つ、いくつかの重要な原則を特定しました。
- 「なぜ」から始める。つながりの構築に着手する前に、なぜつながりが重要なのかを考えてみましょう。システム間、チーム間、データソース間など、あらゆる場所でのつながりが、明確な価値を生み出し、戦略目標に沿ったものになるようにする必要があります。たとえば、モバイルアプリのデータを支店のシステムと接続しようとしているリテールバンクなら、ただそれが可能だからという理由でその施策を進めるのではなく、まずこの取り組みの目的は何か明確に定めることから始めるとよいでしょう。そうすることで「顧客がデジタルの操作で苦労していることを、顧客の来店前に支店のスタッフが把握できるようにする」といった目的が浮かび上がってくるかもしれません。
- エンドツーエンドのジャーニーをマッピングする。個々のやり取りが、どのように人々の幅広いエクスペリエンスにつながり、影響を与えているのかを把握しましょう。その際に力を発揮するのがジャーニーマッピングです。これは、個々のやり取りの状況を具体的に説明するだけでなく、人々の認識や行動に大きな影響を及ぼす接続ポイント(システム間、チーム間、チャネル間など)を特定するのに役立つ方法です。たとえば、医療機関の場合なら、患者さんのジャーニーをマッピングすることで、「予約システムと請求システムとの間の連携が不十分であるために、保険請求が処理される前に請求書が送付され、混乱や不満を招いている」という問題を発見できるかもしれません。
- 現在のXMの成熟度を評価する。どのつながりを優先すべきかは、自分の組織がXM導入のどの段階にあるかによって変わってきます。そのため、まず現状でのCX(カスタマーエクスペリエンス)またはEX(従業員エクスペリエンス)の管理能力や、組織文化、技術的能力を評価することから始めましょう。たとえば、従業員からのフィードバックの収集に初めて取り組む製造業の企業が、自社の能力を評価した結果、まだ複雑な分析に対応できる段階にはないことに気づくかもしれません。その場合、まずは基本的な人事データ(従業員の在職期間や部署など)と運用データ(生産量や安全記録など)を組み合わせて、将来の詳細な分析に向けての基盤づくりをすべきだ、といった判断ができるでしょう。
- 協力してくれる仲間とつながる。まずは、同じような目標を共有していたり、データを補完し合えたり、XMの価値をすでに理解していたりするチームや個人とつながることから始めましょう。相互に価値を生み出し、早い段階で成果を示せるようなパートナーシップに着目します。たとえば、通信会社のCXチームは、すでに顧客の摩擦点を調査している自社の不正防止部門と連携することで、顧客の労力と不正リスクの両方を軽減して顧客のエクスペリエンスをさらに高める、強力なビジネスケースを構築できるかもしれません。
- 規模拡大を視野に入れる。組織の成長に応じて、拡張・適応できる関係を築きましょう。具体的には、明確なデータ基準、定義されたワークフロー、強力なガバナンスプロセスを、最初の段階から確立しておくことです。たとえば、ある航空会社が、顧客からのフィードバックの情報を、試験的にまずある1つの空港の運営チームとつなげたとします。このテストプロジェクトをもとに明確なデータ基準とワークフローを確立しておけば、その後、インフラを再構築することなく、50以上の空港にスピーディーに施策を拡大できるでしょう。
- 人と人との関係を強化する。テクノロジーを、人と人とのつながりにとって変わるものではなく、それを強化してくれるものとして活用しましょう。運用的なつながりを築く際には、業務プロセスの自動化だけでなく、人間の能力や関係をいかに強めるかという視点で考えることが大切です。たとえば、自動でのメール配信では新規ユーザーの興味を十分に引くことができないと気づいたソフトウェア企業が、経験豊富なユーザーと新規ユーザーとをつなぎ、毎月メンタリングコールを行うことで導入率の向上を目指す、といったことが考えられます。
- ハードスキルとソフトスキルを磨く。つながりを築き、維持するために必要な「技術的スキル」(データ統合、システムアーキテクチャ、プロセス設計など)と、それを有意義にするために必要な「対人スキル」(共感、コラボレーション、コミュニティづくりなど)の両方のスキルを従業員が伸ばせるよう支援しましょう。たとえば、新しい患者フィードバックシステムを導入しようとしている医療機関は、看護師に対して、技術面だけでなく、フィードバックに関する繊細な会話の方法についてのトレーニングも提供することで、患者さんの状態改善に向けたより有意義な話し合いを実現できるようになるでしょう。
- つながりの価値を測る。そのつながりがどの程度広く利用されているか、どの程度確実に機能しているか、どのような価値を生み出しているかなど、つながりの有効性を示す指標を測定しましょう。技術的な指標(データフロー、システム統合、プロセス自動化など)と人的な指標(チーム間コラボレーション、コミュニティへの参加、知識の共有など)の両方を評価します。たとえば、ホテルチェーンの場合だと、ゲストフィードバックのダッシュボードにアクセスした部署の数に加えて、得られたインサイトが部門横断的な会議でどの程度共有されているか、その会議でなされた決定がゲストの満足度向上にどのくらい貢献しているか、などを測定・評価するとよいかもしれません。
「つながりの年」に向けてともに取り組みましょう
ぜひこの重要な取り組みをともに始めましょう。まずは以下のことから始めてみてください。
- この視点を組織全体で共有し、つながりを築くことがどのようにXM施策の強化に結びつくかを話し合う。
- 戦略・運用・人間の3つの観点から、自分の組織の現在のつながりの状態を確認する。
- 自分の組織のXM施策において、つながりを強化する機会が具体的にどこにあるか探す。
- クアルトリクスの新しいコミュニティプラットフォームを利用してXMのコミュニティと交流し、インサイトを共有して、仲間から学びを得る。
XM Instituteは2025年を通して、組織がより強固なつながりを構築するのに役立つ、調査、ケーススタディ、実用的なガイダンスを提供していく予定です。クアルトリクスはこれからも、先進的な企業がXM施策を統合し、新しいテクノロジーを活用して、つながりのあるエクスペリエンスを通じて持続可能な価値を創出していく方法を探求し続けます。
まとめ:クアルトリクスは2025年の今年、組織が戦略、運用、人間のつながりを強化することで、XM施策の潜在力を最大限に引き出すための方法を探求していきます。ぜひ私たちと一緒に取り組みましょう。