The Year of Agility: 今、求められるアジャイル
石の上にも三年、石橋を叩いて渡る・・・「石」 が強い基盤や変化しない環境を表現しているとすれば、いわゆる VUCA、先が見えない時代には3年も座ることができる石も、叩く石もありません。これは、過去数年にわたって続いているコロナ禍で、多くの方が身をもって感じられたことではないでしょうか。
さて、すでに 2022 年がスタートして数ヶ月経ちましたが、2021 年と一味違う施策・アクションをすでに実施されている方は、どれくらいいらっしゃいますか?ほとんどの企業が3月決算である日本では、「ただいま年度末のクロージングで大忙し!とてもじゃないけどそれどころじゃない!」という心の声が聞こえてきます。
2022年、確かなことは「予測不可能な年になる」 こと
さて、2022 年はどのような年になるのでしょうか? XM インスティチュートでは、2022 年は「予測不可能な年になる」と宣言しています。
「今年も?」と思われるかもしれませんが、この「予想不可能」の要因はこれまでとは異なります。
コロナ禍がついに 3 年目に突入する 2022年は、オンラインやデジタル活用が 「あるといい」ものから「絶対に必要」な存在へと変化していく年になります。働き方の観点からみると、リモート勤務とオフィス勤務との混在、いわゆる「ハイブリッド型勤務」へのシフトが加速するとともに、「大量退職時代」が到来し、多くの企業が候補者争奪戦に突入しています。
過去の動向から「デジタル化」は予測できても、変化の速度・デジタル化の受容度・どのようなデジタル体験が求められているのかなど、細かな変化の内容を明確に思い描くことは非常に困難です。
今、求められる「アジャイル」
そのような状況の中、2022 年の VUCA 時代に役立つのは「アジャイル」(敏捷性・迅速性) です。「アジャイル」そのものは、主に IT ソフトウェア開発の文脈で使われることが多い用語ですが、VUCA 時代にエクスペリエンス管理 (XM) が必要とする要素を如実に表現しているキーワードでもあります。
エクスペリエンス管理 (XM) における「アジャイル」について、XM インスティチュートが4つのポイントにまとめたのが以下の図です。
シナリオ モデリング
この 1 年間に何が起こるかの予測に頭を使い、熟考の末に細かく具体的なプロジェクト計画を立てるより、起こりうるシナリオを大枠で洗い出し、それぞれに対してどのようなアクションを起こすかを検討しましょう。
例えば、エクササイズ マシンを提供している Peloton のような企業であれば、以下のようなシナリオが考えられるかもしれません。
1)多くの人はジムやエクササイズ スタジオを利用する
2)コロナが再度蔓延した場合は、自宅で運動する需要が急増する
2つで充分かどうか不安に思われるかもしれません。しかし、このように違う方向のシナリオを起点に、どのように行動するかを議論していく仮定で、思いもよらない事象が出てきても対応する力(考える力と行動する力)を養うことができます。
特異なシグナルを検知
これまでは、縦モード解析による異常値の発見と是正が主流となっていました。これに対してアジャイル方式では「流れ」を見るのではなく、「今、何が起こっているのか」「この数値の背景では、どのような変化が起きているのか」を察知することが重要となります。
NPSとEXの相関などが気になると思いますが、机上での分析に長い時間を費やすより、ステークホルダーであるお客さまや従業員、パートナー企業が何を考え、感じているのかを知るために時間を使いましょう。
また、迅速で柔軟なアクションを重視するアジャイルでは、ステークホルダーの「今」の感情・体験を読み取るため、エクスペリエンス管理の仕組みもこまめに調整する必要があります。サーベイ設問の変更・収集チャネルの追加など、必要なアクションを迅速に取ることができる環境を整えるとともに、クロス ファンクション チームを編成し、次に何を実施したら良いか議論するサイクルを構築しましょう。
エクスペリエンスの「破壊」
多くの企業・組織では過去の延長線上、過去の体験を起点として改良を重ねる方法で、エクスペリエンス向上やプロセス改善を実施しているのではないでしょうか。
しかしこの方式は、変化が穏やかな時代であり、お客さまのニーズがある程度予測できることが前提となっています。ニーズが短期間で劇的に変化する今、過去に基づいた改善では十分ではないと捉えられるケースが出てきています。
積極的に既存の成功体験を打破して、変わりゆくニーズに耐えうる新しいエクスペリエンスを創造する勇気を持ちましょう。
従業員の活性化
従業員は変化の担い手として、企業・組織を成功に導く重要な役割を果たします。2022 年には、更に重要な存在となっていきます。
ここまでの項目で考察してきたきたように、企業・組織は大きな変革の時を迎えています。また、多くの就労者が新たな職場を求め、優秀な人材の争奪戦が起きる「大量離職時代」の最中でもあります。
この状況を考えると、これまで以上に「従業員中心の経営」が重要となると考えられます。トップダウンの経営スタイル、「経営層の決めたことを従業員が実施する」運営から脱却し、フロント・バック オフィス含めた従業員全員が、自分の周囲で起きている変化に気づくことができる仕組みを構築し、その気づきに基づいて変革を遂行できるような経営スタイルへシフトしていくことが重要です。経営や意思決定に携わる方は特に、XM に基づいて率先して直接「声」に触れ、社内メンバーと一体となって推進していくカルチャーの創造に注力してください。
アジャイルの基本となるのはエクスペリエンス管理 (XM)
ここまで読んでくださった皆さまであればお気づきのように、アジャイルはお客さまや従業員の「声」に耳を傾けることから始まります。2022 年には、この「声」の収集・分析を進化させましょう。
学び続けましょう:XM は、関わりを持つすべての人々が「今」何を考え、どう感じているのかを、継続的に知るシグナルを拾うことを可能にします。
インサイトを連携しましょう:XM テクノロジーを活用することで、広い対象に対し、必要な情報をタイムラグ最小限で伝達することができます。
迅速に適応しましょう:XM に関連するアクションが活発になるにつれ、企業・組織は迅速かつ意味のあるアクションを起こすカルチャーを内部に醸成します。
エクスペリエンス管理を牽引する皆さま:今!を大切に
2022 年も XM に注力することが重要であることは、ここまでお読みいただいた皆さまであればすでに理解されていると思います。しかし、その活用エリアは限定的であったり、過去の延長線上の改善が主流だったりと、まだまだ拡大の余地がある企業がほとんどです。XMに注目が集まっているからといって、安心してはいけません。XM の牽引者である皆さまは、経営層や現場に対して繰り返し、今なぜ XM が重要なのか、XM を中心に据えた方向性が成功への近道であることを伝授してください。
そのためには、例えば以下のようなアクションが考えられます。
・アジャイル思考を組み込んだ 2022 年版の XM プログラムを紹介する
・XM 活動に関わっているメンバーを呼び、ブレストを実施。XM とアジャイルを組み合わせた活動指針を構築する
・複数部署を巻き込み、XM がアジャイルに活動するために役に立つことを説明するとともに、お客さまや従業員の声の活用を通常業務に組み込む支援を提供する
・XM について測定基準で語るのはやめ、XM 活動のもたらすソフト ベネフィットを、経営層の共感を得られるような形で発信する
・XM インスティチュートが発信する情報を見逃さないように XM プロフェッショナルネットワーク に参加する (英語のみのグループですが、世界最前線の情報を取得できます)
つまるところ・・・一寸の XM 軽んずべからずです!
あわせて読みたい!
*ブログ記事
今年も重要な7つの XM ポイント
*レポート
2022 年度 グローバル消費者トレンド
※このブログは、Qualtrics XMI から 2021 年 12 月 14 日に発行された "Introducing 2022, The Year of Agility" に基づいて執筆されたものです。
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