競争の激しい市場で成功を目指す企業にとって、何が消費者のロイヤルティを高め、何が離脱につながるのかを理解することは極めて重要です。ここでは、最新の消費者トレンドが2025年をどのように形作るかを簡単にご紹介します。
消費者エクスペリエンスの現状
消費者の行動は常に変化していますが、ここ数年、企業は思考をリセットする必要性に迫られています。つまり、消費者にとって今何が本当に重要なのかに目を向ける必要があります。
この流れの変化の背景にある、いくつかの特徴を見てみましょう。
2025年 消費者トレンドレポート(グローバル)をダウンロード
消費者支出
厳しい時代であることは言うまでもありませんが、高級品も必需品もかつてないほど値上がりしており、使えるお金が減っているのが一番の問題です。
実際、消費者の追加購入の意向は、前年度から1.3ポイント低下しています。
しかし、すべてが失われた訳ではありません。当社の調査によると、適切な体験さえすれば、消費者のロイヤルティは高まることがわかっています。
もちろん、その逆もまた真といえます。回答者の半数強は、良くない体験をすると支出を減らすとしています。当然のことながら、ブランドはこのことに気づき始めており、品質向上に努めています。事実、前年度と比較して、消費者が経験した良くない体験の数は減少しています。
この相互作用は興味深い形で現れており、例えば「あれば便利な」サービスを提供するブランドは、消費者の裁量的な支出をめぐって激しく争わなければならないため、銀行、インターネットプロバイダー、公共事業など「必要不可欠な」サービスのカテゴリーの業界に比べて、全体的に良くない体験が少なくなっています。
これにより、もはや良くない経験とは無縁ではなくなった「必要不可欠な」業界を含め、全体的な期待値が高くなっていると考えられます。2025年の消費者行動に関する調査結果によると、良くない体験は売上の最大7%もの損失をもたらす可能性があると言われています。
ブランドロイヤルティ
消費者の支出が全般的に落ち込んでいるときに、ロイヤルティを高めるのは難しいことです。消費者がブランドの乗り換えを検討している場合はなおさらですが、不可能ではありません。
繰り返しになりますが、その解決策は、顧客体験のエンドツーエンドの質にあります。そしてブランドロイヤルティが最も向上するのは、実は低いレベルの顧客体験なのです。
1つ星か2つ星の体験を3つ星に向上させるだけで、消費者の再購入の可能性は68%上昇することがわかっています。これは、3つ星から4つ星や5つ星に向上させた場合の増加率よりも15ポイント以上高くなります。
2025年の消費者トレンド
世界23の国、23,730人の消費者からの回答をもとに作成した第5回消費者トレンドレポートでは、顧客の考え方、そして企業の収益に最も大きな変化をもたらす要因に焦点を当てています。
AIに対する懐疑的な見方から、進化し続けるCXへの期待までデータを精査し、2025年の世界の消費者市場を特徴づける5つのトレンドを選び出しました。
消費者トレンドレポートでは、各トレンドを掘り下げ、世界中のあらゆる業界のあらゆるビジネスが知っておくべき優先分野をピックアップします。
また、今後のビジネスチャンスとリスクを明らかにし、この調査結果をどのように活用するかについて専門家のアドバイスも提供します。
2025年 消費者トレンドレポート(グローバル)をダウンロード
短時間で概要を知りたい方のために、2025年のグローバルコマースを形作る消費者トレンドと購買習慣についてここで簡単にご紹介します。
トレンド1:期待の高まりがロイヤルティの低下を招いている
消費者は、購入するブランドに常に特別な対応をしてくれるよう求めてきましたが、その重要性はさらに高まっています。ここには複雑な要因が絡み合っていますが、要するに、厳しい経済状況により消費者のロイヤルティを維持するのが難しくなっているのに加え、今日の激しい競争環境における良くない体験が、顧客離れを招いています。
良くない体験をした顧客の半数以上(53%)は、支出を減らしますが、逆に1つ星や2つ星から3つ星に向上するだけでも、再購入の可能性は68%も増加します。また、このような向上体験により、他人に推奨する可能性が97%増加します。
どの分野にも改善の余地はあります。例えば、小規模でニッチな新興企業は、単に家族経営の企業と競争しているのではありません。つまり、最先端のCXツールを駆使してインサイトを収集し、優れた体験を提供する、高度に洗練された「デジタルネイティブ」なオンラインショッピングやソーシャルコマースのブランドと、消費者のロイヤルティをめぐって争っているのです。
前述のように、この最初のトレンドは向こう1年の基調となるものです。消費者はブランドがブランドプロミスを果たすことを期待しています。その高まる期待に応えられれば、消費者のロイヤルティを確立するという、他の多くの企業が成し遂げられていないことが実現できるのです。
トレンド2:消費者との関係の基本に立ち返るべき
基本的なことはどうでしょうか。コミュニケーション、サービスの提供、消費者に提供する情報が正確かどうか。これらは非常に重要です。
AIの活用が期待されるこの時代(AIについてはまた後日ご紹介します)、多くの消費者は、取引先ブランドが基本を確実に押さえてくれることを望んでいます。特に、トレンドを追うことで重要なものを見失うことになるかもしれない場合はなおさらです。
「カスタマージャーニー全体において、顧客との関係を左右する瞬間があります。その瞬間は、顧客一人ひとりにとって異なり、いつ、どのように現れるのか見当もつきません。喜びや不満など、あらゆる可能性を考慮しながら、ジャーニー全体にわたって信頼感と一体感を築かなくてはなりません。これまでよりも深く顧客に訴求し、つながる必要があります」
- ブランドン・ハンソン、クアルトリクスGTM戦略+製品マーケティング担当
これはすべて「信頼感」という特性に集約されます。信頼感は、再購入の可能性(0.62)と推薦の可能性(0.79)と高い相関関係があり、消費者は、提供される情報の信頼性が最も重要であると挙げています。
しかし、現実は必ずしも期待通りにはいかないものです。消費者は、コミュニケーションの問題をサービスの提供の次に良くなかった体験として挙げています。
トレンド3:フィードバックは最低レベルに落ち込んでいる
消費者が求める体験を提供できているかどうか、どうすればわかるのでしょうか。フィードバックを収集・分析する方法は急速に変化しており、予想外の形で進んでいます。
顧客が定期的にアンケートに回答することはないかもしれませんが、ソーシャルメディアで不満を述べる可能性も考えられます。確かにそうする人もいますが、実際にはソーシャルメディアを使って不満を訴える人は16%(2021年比6.9ポイント減)、第三者のレビューサイトに投稿する人は22%(同4.2ポイント減)しかいません。
全体として、消費者は自分の良くない体験を人に話さなくなっており、組織が提供する体験を改善するのが難しくなっています。解決策としては、消費者トレンドレポートで詳しく説明しますが、消費者の行動やヒューリスティックをより深く分析することで、CXのインサイトを引き出すことができる高度なツールを使用することです。VoCプログラムでどれだけ幅広く傾聴できるか、つまり顧客のフィードバックを得るためにどれだけ広く網を張れるかにかかっているのです。
「こちらから質問をするだけでなく、人々の声を聴くことが大切です。具体的にはレビューサイト、ソーシャルメディア、電話、Eメールなどで語られていることに注目します。もっと具体的な回答を得たい場合にのみ、アンケートを取るようにしましょう。その際には要点を絞った簡潔なものにします」
- エリザベス・アーケンブラック,クアルトリクス RVP、戦略・ソリューション部門 金融サービス担当
顧客とやり取りが可能な場合は、あらゆる通話、ソーシャルメディアへの投稿、電子メール、ライブチャット、ユーザー生成コンテンツからインサイトを得るだけでなく、セッションのリプレイのレイジクリック数からUIの問題を特定し、生涯顧客履歴データから次に発生する問題を予測することができます。
トレンド4:AIは期待過剰から懐疑的な見方へ
今やAIを使った製品やサービスの話を耳にしない日はないでしょう。しかし、企業がブームに乗っている一方で、消費者はAIへの関心を失いつつあります。
消費者の懸念が大きくなる中で、企業がAIの活用を拡大したいのであれば、懸念を和らげるために一歩先を行く必要があります。
また、テクノロジーの利用に抵抗がない人の割合は前年比で11ポイント減少し、AIを責任を持って使用する組織は信頼できる、と答えたのは、わずか4人に1人でした。カスタマーエクスペリエンスについては、AIを搭載したツールが消費者と人間の担当者との対話を妨げているのではないかという懸念が高まっており、今では2人に1人がこの懸念を示しています。
AIに対する懸念は変化し続けている
- 43% - 個人情報不正利用
- 41% - やり取りの質の低さ
- 51% - 人間が対応してくれない
- 44% - 人間の仕事が置き換えられる
- 29% -やり取りに苦労する
- 28% - 提供された情報が信用できない
AIはビジネスに変革をもたらすツールになり得ますが、成功するかどうかはどう活用するかにかかっています。2025年に顧客を失うことなくAIをツールセットに導入しようと考えているブランドは、AIをビジネスを支える人間に取って代わるものとしてではなく、人間を補完するものとして、最適に活用できる方法を考える必要があります。
トレンド5:今日の消費者が求めるのはプライバシーとパーソナライゼーション
これには微妙なバランスが要求されます。消費者は、自分のためだけにデザインされた、個人的な体験を求めています。その一方で、企業がそのために必要なデータの使用に責任を持っていると信じていない消費者も多くいます。
消費者は、64%がパーソナライズされた体験を提供できる企業から購入したいと考えている一方で、半数以上(53%)が個人情報のプライバシーについて懸念を示しています。
より細やかなパーソナライゼーションには顧客データが必要であるため、これは難しい問題です。
「多くの場合、パーソナライゼーション自体を強調するよりも、そのメリット(セグメント分けの精度向上、サービス対応の向上など)を中心に伝えるほうがよいでしょう」
- レオニー・ブラウン、クアルトリクス CXプリンシパルXMサイエンティスト
これらの状況に対処するには、信頼関係を築くために必要な、カスタマーエクスペリエンスのベストプラクティスを策定することです。信頼度は、消費者が企業に個人データを共有することへの安心感に大きく影響します。ブランドを本質的に信頼している消費者は、そうでない消費者に比べて、安心感のスコアが11ポイント高くなっています。
2025年、消費者にとって最も重要なものは何か
経済状況が厳しくなれば支出は当然減りますが、企業は最も重要な「信頼」を得ることで、ロイヤルカスタマーを獲得することができます。
厳しい経済状況下では、消費者はよく知っていて信頼できるブランドを好みます。つまり、歓迎されていると感じ、何か問題が起きた場合にも、その会社が問題解決に尽力してくれると信じられるブランドを選ぶのです。
信頼は、オンラインショッピングでの行動から消費者の考え方に至るまで、あらゆる面で重要な役割を果たしています。これこそ、ブランドの乗り換えがかつてないほど簡単になった市場で、再購入を促す鍵となります。
信頼関係を築くには、トレンドを追いかける前に基本的なことを確実に実行し、顧客に想定通りのサービスを提供することが重要です。
最終的に消費者の信頼を得ることで、消費者は競合他社ではなく、貴社ブランドにお金を使いたいと考えるようになります。
テクノロジーで顧客との距離を縮める方法
AIは最も画期的な体験管理ツールに搭載されていますが、過剰に宣伝されていることも事実であり、その過剰な露出が多くの消費者を懐疑的にさせていることも否めません。
しかし、CXにおけるAIは、目に見えるものである必要も、コンタクトセンターで実際に使われている生成AIチャットボットである必要もありません。AIは現場の顧客が消費者をいつも驚かせ、喜ばせるような体験を提供するサポートができます。
例えば、機械学習、自然言語処理、エンドツーエンドの消費者行動分析はすべてAI駆動のツールであり、CXチームが提供する体験をあらゆるレベル、あらゆるタッチポイントで細かく調整できます。
消費者のトレンドや購買習慣が進化するにつれ、企業は人々のニーズの変化に適応する必要がありますが、幸いなことに、適切なテクノロジーによってその多くをサポートできます。主なメリットは以下の通りです:
- より多くのリスニングツールを活用すれば、アンケート調査だけでなく、顧客の生の声を聴くことができます。今日の消費者は直接フィードバックをすることが少なくなっているため、様々なリスニングツールを使うことで顧客とのタッチポイントを維持しましょう。そうでなければ、単なる推測になってしまいます。
- フィードバックを自動的にインサイトに変えることで、顧客が何を求めているのか、どう感じているのか、嗜好などをより深く理解できるようになります。現場のチームには、顧客との強固な関係を構築するためのツール、時間、インサイトを提供しましょう。
- エンドツーエンドのジャーニーを追跡し、それがどんなに複雑なものであっても、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのか、また、顧客の満足度を維持し、現場をできるだけ効率的に運営するにはどこに注力すればよいのかを把握することが重要です。
2025年 グローバルの消費者トレンドレポート全文は以下からダウンロードできます。また、Qualtrics® XM for Customer Experience™を活用することで、顧客の問題によって収益の損失を引き起こさない方法についてもご覧ください。
2025年の消費者トレンドをさらに深く掘り下げる