はじめに
これまで長年にわたり、多くの企業様に対して従業員向けの調査の設計、運用、課題抽出やアクションプラン策定などのサポートをさせていただいてきました。その中で、よく議論になる主なポイントについて、「EXあるある」シリーズとして、何回かに分けてご紹介していきたいと思います。第1回は調査実施に向けての意思決定についてです。
何が懸念事項となるのか?
従業員向け調査を実施する際、初めての試みである場合はもちろん、継続的な取組みであっても、じっくり検討して実施の意思決定をするのは当然のことです。しかし、中には「石橋を叩いて渡る」はずが、叩きすぎて壊してしまう、つまり長期間にわたる検討を重ねた結論として、実施を断念されるケースを時々見かけます。例えば、調査目的が不明確だったり、あるいは目的は明確でも、それを達成できるかどうかが判断できずに諦めるケース、実施に要するコストや労力に見合った活動になる確信を持てないまま断念するケースなどです。
そのようなケースで最もよく聞かれるのは、調査結果に基づいて「課題を特定できるのだろうか?」「特定した課題に対して有効なアクションをとることができるのだろうか?」という問いかけであるように思います。実際、アクションプランの策定や実行につながらず、調査に参加した従業員が失望し、「どうせこんな調査に参加しても意味ない、時間の無駄」と感じてしまうのであれば、調査を実施する意味がありません。また、なかなか改善しにくい課題が可視化されると、「パンドラの箱を開けることになる」とか「寝た子を起こすようなもの」と不安を持たれることもあります。
従業員の声を無視できるか?
しかし、会社として本当に心配すべきことは、従業員の目に映っている社内の課題を認識せず、実在する課題をそのまま放置してしまう結果、従業員がやる気を失ってしまうような悪循環ではないでしょうか。2020年にスタートしたコロナ禍では、従業員の声に耳を傾けることをこれまで以上に真剣に取り組もうとした企業が少なくありませんでした。それは、不透明さを増す企業活動に対する従業員の想いを把握する必要性が広く認識されたためと考えられます。ただし、コロナ禍があってもなくても、従業員から最高のパフォーマンスを引き出す重要性はいつでも変わらないはず。採用時に有能な人材を惹きつけ、育成の過程を通して能力やスキルを最大限活かし、組織の発展に貢献する人材を定着させていく。従業員の想いを無視した経営が競争力を高めながら中長期的に繁栄していくことは、極めて難しい時代になっていると言わざるを得ません。
最初の一歩を踏み出すための主な条件
そこまでわかっていても、従業員向け調査を実施することに躊躇されている場合、以下のような条件がある程度クリアできれば最初の一歩を踏み出すことができるはずです。
- 経営陣や組織責任者によるコミットメントを得る
- 調査目的を明確化し、実施する意味を社内で納得させる
- 無理のないスケジュールを組む(運営側、参加側の負担を抑制)
- 各組織に調査結果をフィードバックできるプログラムにする
- マネージャーやリーダーのみのアクションではなく、一般従業員も参加する活動を目指す
一方、検討の途中で身動きができなくなってしまう最大の原因は、必要以上に緻密な事前検討です。つまり、前述の「石橋を叩いて壊してしまう」状況です。どんな課題が抽出されるのか、どんなアクションをとるべきなのか、調査運営に対してどれだけの業務負荷がかかるのか・・・いずれも重要な検討ポイントであることは間違いありませんが、調査を実施する前に推測できる範囲は限られています。不確実な環境の中で緻密に準備しようとすればするほど、わからないことだらけになって前に進めなくなってしまうわけです。
それよりも、まずは従業員の声を収集して課題を可視化しながら、できることから有意義な調査にするための軌道修正をすることをお勧めします。その過程で生まれる様々な議論も、組織内のコミュニケーションを活性化させるきっかけになります。従業員が抱えている課題に対して何もしないまま傍観し、時間が経過するような事態こそ、企業として避けるべきではないでしょうか。
クアルトリクスで
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