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カスタマーエクスペリエンス

不況後10年以上を経て、
カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)が金融業界に与えた影響とは

金融危機をきっかけに、金融業界においてカスタマーエクスペリエンス (顧客体験:Customer Experience = CX) という概念が広く浸透するようになりました。以降10年間にわたり、多くの銀行はカスタマーエクスペリエンスのトランスフォーメーションを経営戦略に組み込み、優先事項の一つとしています。リーマンショック以降、新しいセキュリティ要件や規制上の要件が金融業界を再形成し、そしてファイナンシャルテクノロジー(フィンテック)企業というかつてない競合が業界に加わりました。フィンテック企業の台頭により、かつては支店のロケーションのみを重視した戦略から、金融業界は変化を強いられるようになりました。代わりに着目されるようになったのは、顧客へ提供するエクスペリエンスを通してのブランドの差別化です。 現代は顧客にとってはかつてないほど、複数の金融機関で口座を開設することが容易な時代です。1つの金融機関で全てのニーズを満たすよりも、複数の金融機関に口座を保有することの方が、顧客にとって敷居が低くなっているのです。カスタマーエクスペリエンスの一般的な認知度向上とともに、こういった新しい業界力学によって、金融業界は今、顧客ロイヤリティの向上へ投資し続けるよう駆り立てられています。

それでは実際のところ、カスタマーエクスペリエンスという概念が浸透したことにより、金融業界がどのように変化してきたのでしょうか?

カスタマーエクスペリエンスの現状をより広く理解するため、クアトリクス XM インスティチュート(XMI)(英語) では大規模な顧客ベンチマーク調査を実施しました。具体的には、金融機関を含む20の業界およぶ294の組織とのコミュニケーションについて、10,000人の米国人顧客にサーベイ調査を実施しました。クアルトリクスでは各業界におけるCXのレベルと、カスタマーエクスペリエンスがどのようにブランド・ロイヤリティの様々な側面に影響するのかについて調査を実施しました。金融業界に関しては、大手銀行15行とのエクスペリエンスを評価した5,500人の顧客に、特に注目しています。

金融業界について明らかになったのは以下のことです:

  • 金融業界では、平均以上のレベルでのカスタマーエクスペリエンスを実現している。これは、金融業界におけるカスタマーエクスペリエンスの戦略的取り組みが、顧客からも注目を集めてきていることの象徴です。金融業界の総合的なXMIベンチマーク評価は70%で、これはクアルトリクスがこれまでに実施したカスタマーエクスペリエンス研究に含まれた20業界中、3位と同点でした。さらに、私たちがカスタマーエクスペリエンス分野の研究を開始した9年前から、銀行各社は実際のところ他のどの業界よりもベンチマーク評価を伸ばし、9年間で8ポイントも上昇しているのです。金融業界が特に高得点を獲得しているのは、エクスペリエンスの中の個別の施策です。それはデジタルチャネル、特にモバイルアプリを通じ、便利でシンプルな体験を提供するために投資し続けたことが、結果につながっていることを示します。

     

  • 顧客からの信頼を得ている。クアルトリクスでは様々な業界において、顧客による口コミ(リファラル)・顧客リテンション・企業への信頼度といった項目について評価を実施してきました。金融業界においては、リファラルやリテンションといった項目においては平均的な得点を記録した一方で、企業への信頼度については総合的な業界平均をしのぐ結果となりました。3分の2を上回る金融機関の顧客が、自分たちの利用する銀行を信頼していると回答しているのです。

     

  • 顧客がエクスペリエンスに不満を感じたために、ビジネスチャンスを逃している。過去6ヶ月間にある銀行で取引をした顧客のうち、エクスペリエンスに不満があると回答したのはたった6%でした。しかしエクスペリエンスに不満を感じたという顧客の42%が、その体験の後で銀行での利用額を減らした、または利用しなくなった、と回答したのです。不満を抱く顧客の半数近くからその後のビジネスチャンスを失うというのは、手痛い代償です。しかもこの数値には、ネガティブなブランドイメージのために最初から他行での口座開設を選択する顧客や、そもそもこの銀行を取引用口座に選ばない人々の数は、反映されていません。

     

  • 顧客にとって、便利な支店を探すのは困難です。金融業界のどの側面にもっとも改善が必要かを顧客に問いかけたところ、便利な支店の場所を見つけるのが最も困難という声が15%で最多でした。一方で、9%はウェブサイトでのFAQページの利用とカスタマーサービスの問題について挙げています。カスタマーエクスペリエンス・ギャップの存在は、F2F・デジタル・カスタマーサービスの複数のチャネルを通じたコミュニケーションに広がっているという事実は見逃せません。これは1つだけでなくあらゆるチャネルでカスタマーエクスペリエンスを考慮しなければならない、と銀行側に喚起させる良い例になるでしょう。

     


かつてカスタマーエクスペリエンスにおいては、反面教師として見られていた金融業界は、クアルトリクスの研究でもっとも高得点を得ている業界となりました。これは、どのような業界においても、どのような企業であっても顧客中心主義を実現できるという実績になります。企業の重要な経営戦略の一つとしてCXマネジメントを設置するにあたり、企業が導入すべき3つの習慣がこちらになります。


1) 顧客が何を考え、感じているのかを継続的に学ぶこと

企業は、一貫してポジティブな体験を顧客に提供するため、まず主要な顧客層から、エクスペリエンスが発生する瞬間のフィードバックや行動シグナルを総合的に分析する必要があります。企業とのコミュニケーションについて顧客がどのように考え、感じているかを理解することは (そしてそのデータを、プロダクトや交流履歴のような運営データとマージして分析することは)、企業が顧客のエクスペリエンス・ジャーニーにおける盲点を特定し、新サービスや商品のオポチュニティを見いだし、カスタマーエクスペリエンス・ギャップを積極的に埋めていくことを可能にします。

例えば、ある大手銀行がお問い合わせセンターからの運営データ(待ち時間や転送速度のような)と顧客データを組み合わせたところ、音声自動応答(IVR)システムが顧客を混乱させていたことが判明しました。混乱した顧客は間違ったIVRオプションを入力し、担当者に問題を再度説明しなければならず、そしてまた別の部署へとたらい回しにされていました。この業務プロセスにおいては相当の時間とコストを浪費していたことはもちろん、顧客の信用を失いがちでした。この銀行では、顧客が通話の最初に状況説明を行うだけですむよう、自然言語処理ソリューションを導入しました。同ソリューションは顧客の意図を認識し、サポートチケットにラベルを割当て、その後に顧客を手の空いている適切な担当者へと転送することができます。導入により91%の電話は正しい部署へ取りつながれることになり、通話時間、転送速度、ネガティブな顧客感情は著しく減少したのです。


2) 組織全体でナレッジをシェアすること

顧客がどのように考え、感じ、行動するのかを組織が理解し、そのナレッジが有意義な改善施策につながるよう見届ける必要があります。

例えばある銀行は、異なる瞬間に主要な顧客セグメントがどのように感じていたのかに注目し、一連の綿密なカスタマージャーニーマップを作成しました。ここで例として、CXチームは顧客のフィードバックをもとに家計簿に敏感な顧客1人のカスタマージャーニーマップを作成しました。彼女は、ランチを購入できるかをアプリで確認します。カスターマージャーニーマップはアプリを開く時の彼女の関心から、ウェルネスポイントを確認するために画面をスワイプする前の期待、そして最終的にその得点からの自尊心、苛立ちや怒りまで、彼女の感情面でのジャーニーを追うものでした。このマップはその後、デザイナーなどこういったエクスペリエンス創造を担当する関係者が、作業段階で理解できるように社内でシェアされました。アプリ内を遷移しながら変化する顧客の心境をシェアすることで、銀行は、デザイナーが前向きで魅力のあるエクスペリエンスを意図的に提供できるようにしたのです。

3) 変化するニーズと期待にいち早く順応すること

顧客からのフィードバックデータを社内でシェアすること自体も、カスタマーエクスペリエンス向上施策に企業がそれを役立てない限り、無意味なものになってしまいます。

現在の顧客は、シンプルでかつ、自分たちのニーズにカスタマイズされた体験(パーソナライゼーション)を期待しています。ある地方銀行では、売上見込のある金融商品と提供品の豊富さが、かえって新規顧客を困惑させていたことに気がつきました。この銀行では、顧客が商品やサービスを選択するまでのジャーニーを再設計し、「Help Me Decide (決定ヘルプツール)」を導入しました。これは、個別のニーズについて顧客に多数の質問を行い、その回答にもとづいてカスタマイズされた「お勧め」を出すツールです。こういったパーソナライゼーション型の提案は顧客に自信を感じさせ、購買決定をしやすくします。このような施策の実施によって、実際に申し込み作業プロセスを完了する新規顧客数は、4倍ほど増加することが実証されています。

この記事は以下のリンクに掲載された英文記事の抄訳です:
https://www.forbes.com/sites/sap/2020/02/20/10-years-later-how-customer-experience-has-shaped-the-banking-industry/

クアルトリクスで
カスタマーエクスペリエンス(CX)を改善

クアルトリクス チーム

クアルトリクス エクスペリエンスマネジメント(XM)は、組織にとって4つの重要なエクスペリエンス(顧客、従業員、製品、ブランド)を継続的に評価し価値向上へのアクション実行を支援する唯一のソフトウェアプラットフォームです。クアルトリクスXMを使用すると、組織はあらゆるエクスペリエンスにおいて重要なタッチポイントを全て把握し、どのような変化が関係者にとって最も大きな影響を与えるかを予測することができます。
クアルトリクスの使命は、エクスペリエンスギャップを埋める技術を開発し提供することです。

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